自分が陥りやすい思考のトラップを発見すると、その思考のトラップに陥らないように前もって準備したり、トラップから抜け出す対策が打てます。思考のトラップは、私達の心の奥にはびこっていて、普段意識していない事も多いですから、ABCで書き出して自分の思考のトラップをあぶり出すことが大切です。
書き出して、自分にこんな思考のトラップがあったのか!?と驚くこともあるでしょう。あるいは、自分があまりにも頻繁に思考のトラップに陥っているとびっくりすることもあるでしょう。そういう「気づき」が大切です。そこに思考のトラップが「ある」とわかる事が、思考のトラップから自分を助け出す第一歩です。心理学用語で「アハ体験Aha-experience」というものがありますが、「あ!そうだったのか!」「なるほど!」という気づきの瞬間のことです。自分が思考のトラップにはまっていると気づくことは、この「アハ体験」なのです。
思考のトラップを形成した物は私達の人生での経験、吸収してきた情報です。その中には正しくない物、適切でない物も含まれています。間違った情報や事実と異なる認識で作られた思考のトラップが、私達の言動を狂わせていく場合が多々あります。私達の心は「嘘をつく」のです。自分の心が、自分に嘘をつくというのもおかしい気がしますが、私達の認知能力や方法、つまり世界の捉え方にトリックがあるのです。
私達の心には「assimilation同化作用」 「confirmation bias 確証バイアス」という仕組みがあって、新しく正しい情報を吸収する行為をねじまげてしまうことがたびたび起こるのです。
「同化作用」とは、新しい情報と接しても、自分の既存の世界観や考えの中に同化させてしまい、結局既存の世界観から変わらないままでいる心理作用です。
「確証バイアス」とは、自分がこれではないか?と思っている推察や想像を裏付けする証拠や情報ばかり集めて、それと反する情報は拒絶し、自分の推察を事実だと確信していく心理作用です。
一つ例を挙げてみましょう。UFO(未確認飛行物体)の正体は何でしょうか?
UFOは宇宙人の乗り物だと思っている人は、UFOの写真が実は米国空軍が開発していた最先端ステルス戦闘機でしたと米国軍が発表しても、「いや、それは米国軍の陰謀で、本当は宇宙人が飛ばしている円盤だ」と、今までの考えを変えないままです。これは心理的な同化作用といえます。
また、UFOを宇宙人の乗り物だと信じている人が、空に飛行機とは思えない光の動きを見たとします。その光は、宇宙衛星かもしれませんし、鳥かもしれませんし、流れ星かもしれません。しかしUFOは宇宙人の乗り物だと信じている人にとっては、空に飛んでいる未確認飛行物体は全てUFOであるという結論に向かって、偏った情報を集めていきます。「飛行機の直線的な動きではない」「こんな時間に鳥が飛ぶはずがない」「この地域はUFOが頻繁に出ると聞いた」「衛星が肉眼で見えるはずがない」だから、あの光の動きはUFOに違ないという結論を導き出します。これは典型的な確証バイアスです。
UFOを信じるか信じないかは別にして、上に挙げたような心理的同化作用や確証バイアスを、私達は意識しないまま、大なり小なり日々繰り返しています。その結果として、自分なりの世界観や考え方の癖が作られ、思考のトラップが形成され、思考のトラップに陥ったままで「B自分の考え」が生み出されます。
心理的同化作用や確証バイアスのプロセスを自分一人でキャッチして解きほぐすことはなかなか難しいです。しかし、自分の陥りやすい思考トラップはABCを練習することでわかってきます。「そうか、私はいつもミー・トラップで、何もかも自分のせいにしているのだ!」というように、自分の思考のトラップに気づく「アハ体験」をしてみて下さい。
自分の思考のトラップに気づく、アハ体験で、自分の考えが歪んでいたことに気づきましょう。