思考のトラップがある、と気づくことが第一ですが、思考のトラップはどのように作られたのでしょうか?
それは私達のこれまでの人生での経験、特に子供時代の両親との関係や子供時代の生きてきた環境に大きく影響されています。子供時代に親や自分の周りの世界から、人生におけるルール(と思える事)を吸収し、それが私達の心の奥にがっしりと根を下ろしているのです。
もちろん、子供時代だけでなく、成年になってからの経験も思考のトラップを作っていくことに影響しますが、子供時代の経験の方が一般的には思考のトラップの構築に大きな影響を与えています。
ですから思考のトラップを崩すために一番効果的な方法は、過去に戻って子供時代の経験を修正することになります。しかし、現実的には、過去をやり直すことはできません。両親を変えることもできません。
ですから不可能な事は横に置いておいて、今から可能な事にフォーカスしましょう。
思考のトラップを構成している要素は、私達の意識の奥の方、普段意識していない領域、無意識にあることが多いのです。氷山の一部だけが海から出ていて、その何倍もの部分は海の中に隠されていますが、無意識は海の中に隠されている氷山のようなものです。海の中の氷山の存在にまで気づくことができれば、過去は変えられないにしても、今から自分の思考や、自分の人生のルールを変えていくことは可能です。
意識の下に隠れている思考の部分を、「海の中の氷山」としましょう。「海の中の氷山」が過去に作られた人生のルールとなって、無意識にあなたの思考を左右していきます。「海の中の氷山」には、代表的なものが3種類あります。
アチーブメント思考
- 「成功しなければならない」「完璧でなければならない」
- トンネル・ビジョンの思考のトラップを作っている事が多い。
アクセプタンス思考
- 「他の人から愛されなければならない、賞賛されなければならない、認められなければならない」
- 結論にジャンプ、マインド・リーディングの思考のトラップを作っている事が多い。
コントロール思考
- 「私が物事を決めなければならない」「私が物事を支配しなければならない」
- 過度な一般化の思考のトラップを作っている事が多い。
「海の中の氷山」はたいてい「~しなければならない」という自分が作った人生のルールになっています。そしてそのルールは、非現実的なのです。成功した方がいいでしょうが、人生で一回も失敗しない人はいませんし、成功者ばかりが世の中に生きているわけではありません。他の人から愛されたほうがいいでしょうが、全員から愛されることは無理でしょう。物事を自分の思い通りに進めることは気持ちよいでしょうが、そんな機会は現実にはめったにありません。そう、「海の中の氷山」は結構非現実的、「ありえない」ルールなのです。
思考のトラップに気づいたら、もう一歩進んで、思考のトラップの下に「海の中の氷山」がないかを考えてみましょう。例えば、「トンネル・ビジョン」の思考のトラップに頻繁に陥る人は、「成功しなければならない」という「海の中の氷山」を自分が持っていないか考えてみましょう。
思考のトラップの下に「海の中の氷山」があった!とんでもないルールで固まった氷山だった!という気づきを実感する事が大切です。
自分が陥りやすい思考のトラップの下に「海の中の氷山」が隠れていないか、探ってみましょう。特に「アチーブメント思考」「アクセプタンス思考」「コントロール思考」のような非現実的なルールが隠れていないか、考えてみましょう。「海の中の氷山」を発見したら、こんな思考の氷山が隠れていた!と、ノートに書いていきましょう。
※Karen Reinvich博士の著作『The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles』を参考にしています。