ABCの練習を繰り返していると、自分が陥りやすい思考のトラップや、自分が無意識に持っていた人生ルール「海の中の氷山」に気づきやすくなります。繰り返し出てくる思考のトラップや「海の中の氷山」はノートに書いておいて、困難な状況になった時に、ノートを開いて読み返してみましょう。「ああ、自分はすぐ「カタストロファイジング」するから、今回もオーバーに考え過ぎているかも」「自分はすぐミートラップにはまる傾向がある。よく考えれば、何でも自分のせいにするのはおかしいのではないか」などと、自分の中に渦巻く感情や思考に対して、少し距離を置いてみることができるようになってきます。
特に書き出したBの中に「いつも」「すべて」「絶対に」「完全に」「すべてが」「どうせ」「もうだめだ」「もう終わりだ」という言葉が入っていたら要注意。「ミー/オールウェイズ/エブリシング」の思考になっている可能性が高いからです。
「レジリエンスを身につけるワーク➂ 悪い出来事が起きた時の3つの考え方を練習しましょう」で説明したように、ミー/オールウェイズ/エブリシング思考は、レジリエンスの真逆になります。レジリエンスを鍛えるためには、ミー/オールウェイズ/エブリシング思考から脱却する事がとても重要です。
Mさんの例で見てみましょう。Mさんの書き出したBの中で「いつも」「すべて」「絶対に」「完全に」「すべてが」「どうせ」「もうだめだ」「もう終わりだ」が入っているものがあります。
- 上司にも顧客にも全く信用されていない。
- いつも上司に叱られてばかりいる。
- 一つミスをしたらもう終わりだ。
これらは典型的なミー/オールウェイズ/エブリシング思考です。
「レジリエンスを使って自分を変えていく方法⑫ ミー/オールウェイズ/エブリシングのリアリティをチェックしましょう。」で説明したように、そのリアリティ度をチェックしましょう。
あるいは、証拠確認も、ミー/オールウェイズ/エブリシング思考から抜け出す一つの方法です。
証拠確認は、持っているBを肯定する証拠と、否定する証拠の両方を集めてみます。探偵や刑事になったつもりで、証拠を集めてみましょう。
たとえば「いつも上司に叱られてばかりいる」というMさんのBについて考えてみましょう。
- このBを肯定する証拠
→今日資料のミスをしたことを上司に叱られた
- このBを否定する証拠
→前回は資料の構成がよいと上司からほめてもらった。
→私がミスをしない限り、上司に叱られた記憶はない。
→上司に叱られているのは、私だけではなく、YさんやZさんも叱られていた。
Bを否定する証拠の方が多く見つかれば、裁判にかければこのBは否決されるはずです。ですから、このBは信ずる必要のないBだと裁決します。
このように、「いつも」「すべて」「絶対に」「完全に」「すべてが」「どうせ」「もうだめだ」「もう終わりだ」がBの中に入っていたら、客観的な証拠集めをして検証していくこともミー/オールウェイズ/エブリシング思考から抜け出し、レジリエンスを高めていく方法です。
Bが事実なのか、そうでないのか。正確に見極めることが重要です。自分の中の感情や行動を正しく認識することが、人生を変えていく一歩になります。つまり、思考する事がレジリエンスを高める鍵になります。
ABCの練習でいろいろとノートに書き出していく行為は、思考を形にして記録する有効な方法です。また、後から繰り返し読み返すことで、自分の思考の癖を把握しやすくなります。
「いつも」「すべて」「絶対に」「完全に」「すべてが」「どうせ」「もうだめだ」「もう終わりだ」がBの中に含まれていたら、そのBを肯定する証拠と否定する証拠を集めて、検証してみましょう。
※Karen Reinvich博士の著作『The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles』を参考にしています。