ABCで書き出したBの中に、まだ起きていない出来事をあれこれ想像して恐怖を感じたり、パニックになったり、悩んでいるという事はないでしょうか?
「これが起きたらどうしよう?」と、まだ起きていない事を想像して悩む思考を、What-if思考といいます。未来ぐるぐる思考ともいいましょうか。ここでは「どうしよう思考」と呼んでおきましょう。
「どうしよう思考」は、次々と悪いケースを想像して悩み、ますます落ち込んでいく傾向にあり、何度も繰り返して考える特徴があります。ルミネ―ションrumination、反芻思考ともいいます。
この「どうしよう」思考に陥ると、どうしよう、どうしようと悪い事が起きた場合を想像するだけで、何も行動を起こさないで、同じ悩みの淵をぐるぐる回っているパターンが多いです。
「どうしよう思考」から抜け出すためには、どうしたらよいでしょうか?
まずはいつものABCのようにBの箇所に、自分の考えを書き出します。
Mさんの例で見ていきましょう。MさんはABCのBに次のような考えを書いていました。
顧客から信用されないから、担当をクビにされるかも。そうなれば会社は私を解雇するかもしれない。30歳近い年齢で職探ししてもいい仕事がみつかるわけがない。
これは典型的なWhat-if思考、「どうしよう思考」ですね。
考えをシナリオごとに分解して、↓で繋いでみます。
①顧客から信用されない
↓
➁担当をクビにされるかも
↓
➂そうなれば会社は私を解雇するかも
↓
④30歳近い年齢で職探ししても仕事がみつかるわけがない
次に、それぞれのシナリオが現実になる確率を考えてみます。
①顧客から信用されていない
Mさんの例でいえば、まず、「顧客から信用されていない」という出発点のシナリオが事実かどうかがあやふやです。Mさんは確かにXさんとの会議で使った資料のミスをXさんに叱責され会議は中断しました。Xさんは腹を立てていると見受けられます。しかし、Xさんの信用をこの先も取り戻せないとは限りません。また、Xさんの信用を取り戻せなかったとしても、Mさんの顧客はXさんだけではありません。
ただ、Xさんの信用を失い、この先も取り戻せない可能性もありえますので、ここの確率を半分くらい、50%としておきましょう。
➁担当をクビになるかもしれない
顧客をXさんと限れば、Xさんにずっと信用されなければ担当をクビになる可能性はあります。ですからここの確率は多めに90%にしておきましょう。
➂そうなれば会社は私を解雇するかも。
もしもXさんの信用を取り戻せなくて担当をクビになったとしても、Mさんには他の顧客がいます。他の顧客で実績をあげる可能性があります。また、一般常識的に考えると、一人の顧客の信用を失ったことだけで社員を解雇することは稀です。
ここの確率はゼロにはできないまでも低いと考え、20%とします。
④30歳近い年齢で職探しをしても仕事が見つかるわけがない。
どのような職種を望むかにもよりますが、30歳近い年齢という比較的若い世代が職探しをしてまったく仕事が見つからないという確率は、現在の日本ではかなり低いといえます。この点についてはデータを使いましょう。政府機関が発表している有効求人倍率は1.26倍(新規学卒者とパートタイムを除く。2022年4月現在)です。1を超えているという事は、求職している人は何等かの仕事が1個はみつかるということを示しています。
ですからこのシナリオの確率はかなり低いので10%としましょう。
次に、各シナリオの確率を掛け合わせて、最悪のシナリオが起こる確率を計算します。そうすると「顧客から信用されず、担当をクビになり、会社から解雇され、職探しをしても仕事がみつからない」というシナリオが現実になる確率は
50%×90%×20%×10%=0.9%
(計算する時は小数点に直して計算します。0.5×0.9×0.2×0.1=0.009 これに100をかけてパーセンテージにします。0.009×100=0.9%)
1%にも満たない確率なのです。
それほど低い確率ならば、そんなシナリオをあれこれ心配しても無駄ですよね。
数字ではっきりそれがわかると、自分の「どうしよう思考」が非現実的な想像に心のエネルギーと時間を使っていたと実感でします。
もっと起こる確率が高いシナリオを心配するか、自分が心配している悪いシナリオが起こらないように自分ができる事を探すことにエネルギーと時間を使いましょう。
「どうしよう思考」が出てきたら、シナリオごとに分解して、それぞれの起こる確率を考え、自分の悪い想像が現実化する確率がどれほど低いかを実感しましょう。
シナリオの確率を考える時に、有効求人倍率のように、公的機関や大手研究機関が発表しているデータを利用すると、確率により客観性が持たされ、自分が納得しやすくなります。