ここまで19回に渡って「レジリエンスを使って自分を変えていく方法」を紹介してきました。
大切な事は、練習です。思考のトラップや、自分の無意識の中の「海の中の氷山」のような固定観念に気づくためには、ABCの練習を繰り返すことです。
そして練習の過程をノートに書き記していくことです。書き出すことで、自分の考えや感情が形になり、はっきりしてきます。レジリエンスを鍛えていく過程を書き記したノートは、何回も見返すことで、自分が頻繁に陥りやすい思考のトラップの種類や、前と同じ誤解や間違いをしているという気づき、そして自分でも気づかなかった無意識の中の固定概念や人生ルール(と自分が思っていること)が見えるようになります。自分が注意しなければならない考えや感情に、気づくようになります。
存在がわかりさえすれば、それに対し、アクションが取れます。反論したり、質問したり、分解していくことで、自分に必要のない固定観念や思考のトラップを崩していきましょう。
自分の事は、意外とわかっていないものなのです。
Finding yourself「自分探し」という言葉がありますが、レジリエンスにおいて「自分探し」というのはナンセンスです。自分を探すのではなく、自分を創っていくのです。Creating yourself. クリエイティング・ユアセルフ、「自分創り」こそ、レジリエンスを活用して目指していくものです。
誰もが、「こうありたい」「こうなりたい」「こういう風に生きていきたい」という願望を人生や自分自身に持っていると思います。自分の理想像に近づいていくためにまず行わなければいけない事は、今の自分のことを正確に知ることです。
自分が何を考え、どういう行動を起こしがちで、どのような価値観や固定観念を持っているか?それを知る事が第一です。そのためにABCの練習は有効です。
第二に、自分が持っている考えや固定観念は間違っていないか、正しいのかを追及していきます。ふさわしくない考えに基づいて行動を起こせば、ふさわしくない結果をもたらします。ABCを練習し、Bの自分の考えを徹底分析して、チャンレンジしていくことで、正しいBを持つようになり、自分の理想像に自分を近づけていけます。
ABCや、リアリティ・チェック、リアルタイム・レジリエンス、コーミング等、これまでに紹介した様々なレジリエンスのスキルの少なくとも一つを、毎日の暮らしの中で使ってみて下さい。毎日使っているうちに、自分のものになっていきます。
「レジリエンスを身につけるワーク① レジリエンスは生きるワザ」でも書いたように、レジリエンスは学習や練習で身に着けることができるのです。
Karen Reinvich博士は著作『The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles』の中で、ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw、アイルランド出身の文学者、評論家)の言葉を紹介しています。
Identity is not “found” like a coin on the sidewalk. It is created-shaped by the experiences at a lifetime.
「自分」とは、道端のコインのように偶然見つけるものではない。それは人生を通して様々な経験によって創られ、形を成していくものである。
(日本語訳は私の意訳です)
レジリエンスは、「自分創り」のためにとても役立つスキルなのです。
これまで紹介してきたレジリエンスのスキルを練習していきましょう。その過程をノートに書き記しておきましょう。