怒りや悲しみ、恥や悔しさなどの激しい感情を感じると、その感情に自分をハイジャックされてしまうことがあります。
ネガティブな感情がそのまま自分自身であるように感じてしまうことがあります。
怒りの感情や悲しみの感情に覆いつくされて、自分を嫌悪、絶望することがあります。
感情に任せて、自分や相手を傷つける言動を取ったり、本意ではない行動を取ってしまうことがあります。
感情が自分をすっぽり覆いつくして支配してしまうからです。
でも、感情は自分自身ではないのです。
「Emotional Agility」(感情の敏捷性)を提唱した心理学者のスーザン・デイヴィッド博士は、感情と自分自身の間にスペースを作るように勧めています。
そのための一つの方法が雲と空をイメージすることです。
感情は空に浮かんでいる雲のようなもので、自分は空。空に、いろいろな雲が現れて、浮かんで、流れていきますが、空はそこに在ります。雲は空全体ではありません。時々現れますが、やがて流れて消えていくものです。時には黒々とした雨雲に発展し、激しい雨を降らせることもあるかもしれませんが、雨は時間が経てば止みます。
変化していく雲ではなく、いろいろな感情の雲を漂わせている空が自分だと考えるようにしましょう。幾つかの雲がぷかぷか浮かんでいる空をイメージしてみましょう。
激しい感情、ネガティブな感情を感じたら、「ああ、怒りの雲が出てきたなあ」「悲しみの雲が漂ってきた」と思い、感情はあくまでも自分の中の一部であり、変化していくものだと考えましょう。感情イコール自分ではないのです。
感情と自分の間にスペースを作るもう一つの方法は、感情を紙に書き出すことです。怒り、憎しみ、悲しみ、失望・・・様々なネガティブな感情がこみ上げてきたら、机に一枚白い紙を置いて、そこに自分の感情を書きます。「怒っている」「絶望している」等、自分の感情を書き出します。その後、その紙を裏返しにして、じっと座ります。
そして、自分に語り掛けます。「あなたは今怒っているのだね」「あなたは絶望して、もう何もかも諦めたいと思っているのだね」と、友人に語りかけるように、自分に語り掛けます。激しい感情を感じている自分と、それを外側から静かに眺めている自分とを分離させるのです。
激しい感情を感じている自分に対して、「ああいう事をされれば怒るのは当たり前だよね」「仕事で失敗してしまったから自分に絶望しているのだね」「不運続きで、ちょっと精神的に疲れちゃったよね」などと、もう一人の自分が理解を示してあげます。泣いている子供をあやすように、落ち込んでいる子供を励ますように、激しい感情を抱いている自分に心の中で優しく話しかけてあげます。
ネガティブな感情に対処する方法は幾つかありますが(「ネガティブな感情の対処法」シリーズをご覧下さい)、感情が激しいもので、その感情に覆われていると感じる場合、感情が自分を支配してしまわないように、まずは感情は自分とイコールではないことを思い出しましょう。そのために、上記の2つの方法を試してみましょう。