コロナウィルスの感染拡大で、ソーシャル・ディスタンス(物理的に人との距離を取る)が感染予防対策として推奨されました。
ソーシャル・ディスタンスの心理バージョンが、サイコロジカル・ディスタンス、心理的ディスタンスです。
親しい人と心理的距離を取るという事ではなく、自分の不安や心配と距離を置こうという事です。
不安、心配、怒り、失望、落胆・・・様々なネガティブな感情に支配されると、人間は冷静でいられません。論理的にもなれません。でも、ネガティブ感情から心理的ディスタンスを取れば、ネガティブ感情を扱いやすくなります。
心理的ディスタンスの取り方として次の3つの方法があります。
- 自分に対して、第三者として語りかけます。自分を名前で呼びます。「鈴木花子は大変な目にあいました」のように、自分自身に名前で呼びかけます。
- IではなくWEを使います。「私が~」ではなく、「私達は~」で自分に語りかけます。「私はコロナウィルス感染拡大による外出自粛でストレスが溜まっている」を「私達はみんなコロナウィルス感染拡大による外出自粛でストレスが溜まっている」と、自分だけが苦しい状況にいるわけではないという事を認識します。
- 時間的ディスタンスを取ります。今から2~3年経ったらどうなっているのかを想像します。「今は仕事が山積で残業続きで大変だけれど、2年くらいたてば自分はプロジェクトを率いるリーダーになれるかもしれない。そのための下積みだと思おう」というように、2~3年時間が経過し今の苦しい状況が改善される未来を想像します。物事はずっと同じではいられません。よい意味でも、悪い意味でも必ず変わっていきます。ですから、2~3年の時間がたてば、自分の置かれている状況は必ず何らかの形で変わっていくはずです。
例えば、親友が長く付き合って結婚を考えていた恋人からふられたとします。あなたは泣いている親友に対して、「信じていた恋人に振られるなんて悲しくて絶望的だよね。もう結婚できないかもしれないよね。恋人のことを許せないし、恨むよね」なんて言いませんよね?
「恋人に振られてしまった事は悲しいけれど、また新しい出会いがあるよ。その恋人とはそれまでの縁だったということだよ。新しく恋人をみつけて結婚する事も、まだまだ若いのだからできるよ」と、親友を慰め、勇気づけるのではないでしょうか?コーチングのように、親友を元気づけてあげるのではないでしょうか?
でも、これが自分の事だとなかなかそういかないものです。もしも自分が親友の立場であれば、自分自身に向かって前者のフレーズ「信じていた恋人に振られるなんて悲しくて絶望的だよ。もう結婚できないよね。恋人のことを許せないし、恨むよね」と、自分に語りかけてしまうのではないでしょうか?
それを、心理的ディスタンスを取ることで、後者のフレーズ「また新しい出会いがあるよ。新しい恋人をみつけて結婚する事もできるよ」と、自分で自分に言えるようにしていきます。
- 自分の名前で呼ぶ:鈴木花子、恋人にふられたからといって、人生終わったみたいに思う必要はないよ。まだ28歳でしょう。これから新しい出会いのチャンスは幾らでもあるよ。
- IではなくWE:失恋した経験は私だけではない。世界中のたくさんの人達が失恋を経験している。私達はみんな一度か二度は失恋しているはずだ。
- 2-3年後の未来を想像:今から2年たって30歳になった頃には、この失恋は完全に思い出になっているはず。そして新しい恋人に出会うためのステップだったのだと思っているはず。
ネガティブな気持ちにばかり捕らわれていると、自分自身がネガティブな感情の深い穴の中に落ち込んでしまいます。ネガティブな感情と、自分自身が一体化しないこと。これがネガティブな感情と対処するコツです。そのために、心理的ディスタンスを意識しましょう。