このブログでもたびたび瞑想の時間を持つ事で心が落ち着き、物事に集中したり、新しいアイディアが浮かんでくると説明してきました。
ここで言う瞑想とは、宗教とは関係なく、心があちこちさまようマインドワンダリングをストップさせ、マインドフルネスになる事を目的としています。マインドフルネスと「いま、ここ」の時間を意識し、感情を平にし、心の中の波立つ感情を鎮めることです。
瞑想というとハードルが高いのであれば、意識的に呼吸をする事だけでもマインドフルネスの時間を持てます。「レジリエンスを身につけるワーク⑪ 意識的な呼吸で思考のトラップから抜け出しましょう。」で紹介したような「意識的な呼吸」をする事がマインドフルネスに繋がります。目を閉じて、息を吸う時にお腹を膨らませ、息を吐く時にお腹をぺったんこにして呼吸をし、2分間その呼吸に集中することです。
これに慣れてきたら、2分を5分、10分と時間を延ばしていき、場所も静かで落ち着ける空間に心地よく座って意識的な呼吸をするようになれば、それが瞑想になります。
他にも、瞑想以外にマインドフルネスな時間を持てる方法がありますので紹介しましょう。
一つの対象に一分間完全集中して観察する
タイマーをセットして、目の前の花を一分間じっと観察します。花の色、花びらの形、葉っぱの形、花芯の形等、じっと花を見つめます。対象は果物でも石でもよいですが、できれば植物の方が観察する部分が色々あるのでお勧めです。一分間ただただその対象だけに集中しましょう。一分間なら、他の事を考えるマインドワンダリングを防ぎやすいと思います。
自分の行動を段階に分けて観察する
珈琲を飲むという行為や、歯磨きをする行為を、小さな段階ごとに意識して「今、私は〇〇〇している」と考えながら行います。普段は無意識にいつもの手順通りに済ませる行動を、ゆっくり、一段階づつ、意識して行います。歯磨きならば、歯ブラシを取る、歯磨き粉をつける、右上の歯を磨く、右下の歯を磨く等、小さい段階ごとに、章を分けるように意識しながら行動します。
ヘッドフォンをして静かなジャズやクラシックを聴く。
ヘッドフォンで音楽を聴くとその時間に集中しやすいです。ながら行為ではなく、ただその音楽を聴くことだけに集中しましょう。心に何か浮かんでくるかもしれませんが、浮かんできたら、横に流すようなイメージで、再び音楽に意識を戻しましょう。
ただし、音楽は歌詞がない曲で、テンポが速くないものを選んで下さい。また、クラシックでもラフマニノフやベートーベンのような迫力ある音楽でない方がよいでしょう。スロージャズや、ドビュッシーの曲などがお勧めです。
マインドフルネスとは、今の自分の気持ちに集中することです。私達は常時様々な事を思ったり、感じたりしていて、脳がフル回転している状況です。でも、余計な事、必要でないこともたくさん考えているのです。
そこで、まず自分の気持ちを静かに落ち着かせて、脳の動きをスッキリさせてみると、気持ちがフラットになり、感情が穏やかになります。新しいアイディアがふっとひらめいたり、物事の別の一面が見えてきたりします。
前著「ポジティブでない人のためのポジティブ心理学 実践ワー30」でも書きましたが、脳科学の発展により脳の働き方が詳しく判明してきて、マインドフルネスが脳によい効果を与えることが科学的にわかってきました。
何もしていない時に活発になる神経ネットワークがデフォルトモード・ネットワークで、このネットワークが活発になると過去の失敗を思い出したり、将来の不安を感じている状態になります。マインドワンダリングと呼ばれる状態です。脳のエネルギーを浪費している状態です。
一方、課題を遂行している時に活発になる神経ネットワークは、セントラル・エグゼクティブ・ネットワークといい、計画、意思決定、注意制御、短期記憶の処理をコントロールしています。このネットワークが活発になっている時には、デフォルトモードのネットワークは動きが穏やかになっています。
そして、デフォルトモードとセントラルのネットワークの切り替えを行う神経ネットワークが、セイリエンス・ネットワークです。外界からの刺激を受けて行動を決める司令官のような役割をしています。
最近の研究によって、マインドフルネスにより、このセイリエンス・ネットワークが活発化することがわかっています。司令官が優秀になってくるわけです。
マインドフルネスの時間を持つ事は、この脳の中の司令官を優秀にする効能があるのです。
マインドフルネスになるために一番のお勧めは瞑想の時間を毎日持つ事なのですが、瞑想がどうも苦手だという方は、まずは上に挙げたようなすぐ取り掛かれそうな行動から始めてみてはいかがでしょうか。
次第に、マインドフルネスとはこういう感覚かとわかってきます。また、逆にマインドワンダリングをしている自分にも気づきやすくなります。
※Susan David 著『Emotional Agility: Get Unstuck, Embrace Change, and Thrive in Work and Life 』を参考にしています。