ノーベル医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士と健康心理学者のエリッサ・エベル博士が著した『The Telomere Effect:テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』の中でテロメアを伸ばすための様々な方法が紹介されています。これらの方法は生命科学的見地から有効というだけでなく、ポジティブ心理学の見地からも有効な方法が多いのです。
テロメアを短くする要因の一つが脅威となるストレス。ストレスはすべて悪いというわけではなくて、逃走や逃避反応に走ってしまったり、最悪の状況ばかりをぐるぐる考えているようなストレスがよくないのです。
『テロメア・エフェクト』では、ストレスの扱い方の一つとして、感情と思考の間に距離を置くことを勧めています。この方法はポジティブ心理学でもレジリエンスを鍛える方法として推奨しています。何かストレスを感じるような事態に遭遇し、そこに感情が生まれるわけですが、その感情と、思考(自分の考え)とは意識して距離を置くようにすると、そのストレスを脅威と感じるのではなく、チャレンジ、挑戦できる対象として捉えることができるようになる可能性が高いのです。
この感情と思考の間に距離を置くことを「ディスタンシング」といい、3つの代表的な方法があります。
言語的に距離を置く
イライラ、ウツウツしている自分に対し、「私」ではなく第三者として呼びかけます。自分の名前を呼んで「マイコ、あなたはなぜそんなにイライラしているの?」と話しかけてもよいですし、「ネガティブな感情の対処法① ネガティブな自分に名前をつける」で紹介したように、ネガティブな自分の感情に、他の名前(ブルーさん等)を付けることもお勧めです。
時間的に距離を置く
ストレスフルな状況にある時、自分に「この出来事は10年後もまだ自分に影響を与えているだろうか?」と問います。あるいは「この出来事は1年後も同じままだろうか?」と問うこともお勧めです。今という時間から少し離れて、長い時間から今の自分を俯瞰してみます。
視覚的に距離を置く
自分の今の状況を、一歩引いて、映画のワンシーンを見ているように、外から眺めてみます。自分という登場人物とその周りの人々で起きている状態を、映画の観客、あるいは映画監督になったつもりで、外から眺めてみましょう。
3つのディスタンシングともに、落ち着ける静かな場所で、一人で目を閉じて行う事が理想的です。自分の感情に、自分自身が覆われてその感情しか認識できない状態から、ディスタンシングで自分の思考を離していくのです。
ディスタンシングを行っても、原因となったストレス事態が急に消えることはあまりないと思います。しかし、そのストレスを客観的に理解、把握し、それほどひどい事態ではない事を確認したり、ストレスに立ち向かっていく気力が沸いてきたり、自分にできる事がある事に気づき解決のための行動を起こす気になったりします。
大切なのはストレスにより、自分の感情と思考がぐちゃぐちゃになり、感情=自分自身にならない事です。そのためにディスタンシングを試してみましょう。