ノーベル医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士と健康心理学者のエリッサ・エベル博士が著した『The Telomere Effect:テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』の中でテロメアを伸ばすための様々な方法が紹介されています。これらの方法は生命科学的見地から有効というだけでなく、ポジティブ心理学の見地からも有効な方法が多いのです。
テロメアが短くなると、遺伝子情報が正確にコピーされなくなったり、細胞分裂をしなくなって老化が始まるのですが、辛い経験や脅威となる大きなストレスを感じるとテロメアが短くなる傾向があります。
しかし、一度短くなったり傷ついりしたテロメアも修復が可能だとわかったのです。
自分が不安や脅威を感じる存在を全部避けようとすると、かえって不安や脅威は大きくなっていきます。「ピンクの象のことを考えないようにして下さい」と言われた途端、ピンクの象が頭の中に浮かんでいすわってしまうのと同様、意識すればするほど、その対象の事を気にしてしまうわけです。それに、現実世界ですべての不安や脅威を避ける事は不可能ですよね。
だからこそ、不安や脅威を感じる対象をすべて避けるのではなく、減らす、そして時々は立ち向かっていく事が大切になります。これは「テロメア改善計画➂ チャレンジ・ストレスを歓迎しましょう。」で説明した通りです。
もう一つ、ストレスの量を減らす、あるいはストレスに立ち向かっていく気持ちを培うために有効な方法の一つがマインドフルネス瞑想です。マインドフルネスとは「今、ここ」の自分にフォーカスして、あれこれ思考が回り出すことをストップする事です。
私達の思考にはドゥーイング・モードとビーイング・モードの2種類があります。
ドゥーイング・モードは現実の世界と自分の望みとのギャップから抜け出そうとしている状態で、自分が今している事に注意が向いていません。過去や未来に意識が飛び、現在の事を考えていません。ストレスの対象のことばかり考えています。そして自分の考えがすべて真実であると思い込んでいます。また、考えが気分で左右されます。
一方、ビーイング・モードは、自分の関心が向かう先を制御でき、物事を変えようと必死になるのではなく、自分がコントロールできる何かを選び取り、自分に喜びを与えてくれる小さな存在を選ぶ傾向にあります。過去や未来ではなく、今現在の事を考えています。自分の考えが必ずしも真実とは限らないと思っていて、他の考えにも心を開けます。また自分にとって不愉快なものも許容できます。
ビーイング・モードにいると、人間は幸福感を感じやすくなり、テロメア的にも好影響です。
このビーイング・モードに入るためにはマインドフルネスな時間を持つ事が有効であり、マインドフルネスになるためには瞑想が適しているわけです。
しかし、いきなり、本格的な瞑想を習う必要はありません。まずは3分間呼吸をしてみましょう。人間の思考の寿命は90秒なのです。ただ、何回もその思考を反芻したり、追い回していれば、思考の寿命が90秒以上にどんどん伸びてしまいます。3分間呼吸で思考を90秒以上に伸ばさない、思考に過去を遡らせないようにします。
3分間呼吸の行い方は次の通りです。
- 背筋をまっすぐにして座り目を閉じます。
- 息を大きく吸って、大きく吐きます。呼吸を意識します。
- 思考が浮かんできたら、それはそのまま受け入れ、ラベルを貼ります。例えばこの気持ちは嫉妬だなとラベルを貼り、そのままそこにそっと置くことをイメージします。あるいは箱にいれて蓋をしてそこに置くイメージです。
- 呼吸を意識しながら続け、思考の下にある静かな状態を感じ取ります。
- 自分の頭、顔、手、足、など体の各部分に呼吸を広げるように呼吸を繰り返します。
- 最後に呼吸が自分全体を優しく包むようにイメージして終わります。
- 3分の時間を測るためにスマートフォンのタイマーをセットしてもよいでしょう。
3分間呼吸の時間の心の状態がビーイング・モードです。
不安や脅威を感じて苦しくなったら、それはドゥーイング・モードになっている証ですから、3分間呼吸の時間をとってビーイング・モードに切り替えてみましょう。
初めは上手くいかなくても、繰り返していくうちに、呼吸へ集中できるようになっていき、様々な思考の下にある静かな状態の自分にコネクトしやすくなっていきます。