「Good Habits, Bad Habits」の著者であるWendy Woodは、よい習慣を身に付けるためにはハビット・フォーメーション(Habit Formation)のポイントを押さえる事が大切だと書いています。ハビット・フォーメーション、日本語でいえば「習慣作り」ですが、習慣作りのポイントは3つあります。
- Reward報酬:その行動によって何を得られるか。
- Routineルーティン化:その行動をいちいち考えるまでもなく、無意識で行うようになる。
- Contactコンタクト:その行動を起こそうとするコンタクト・ポイントがある。
前回はこの3つのポイントを使ってよい習慣を身に付ける方法を説明しましたが、今回は悪い習慣をストップする方法を紹介しましょう。
悪い習慣を止めるためには3つのポイントのうち「コンタクト」が最も重要です。
「悪い習慣は体に悪いからやめるぞ!」と強い意志の力でストップしようとしても、なかなか難しいものです。意志の力、ウィルパワーは、悪い習慣を止める時にはあまり有効ではないのです。
喫煙、深酒、食べ過ぎ、カウチポテト、スマホばかり見ている・・・。
自分では止めたいと思っている、心身によくない習慣とわかってはいる、後から後悔や罪悪感に悩まされるとわかっているけれども行動を起こしてしまう。
そのような、いつのまにか身についてしまったけれど止めたいと思っている悪い習慣を、どのように断ち切るべきかというと、その習慣を呼び起こす「コンタクト」を減らす、なくす事が一番です。
「コンタクト」はその習慣を呼び起こすトリガーともいえます。物、人、場所、特定の時間、特定の音、感情など、様々な物が「コンタクト」になります。
喫煙ならば、たばこが服のポケットに入っている、喫煙する友人が身近にいる、お昼を食べた後いつも喫煙所に向かってしまう、いらいらするとたばこを吸いたくなる、など、様々な「コンタクト」があります。まず「コンタクト」になる物、状況をなくす、減らす事です。
たばこを持ち歩かない、喫煙する友人と一緒にいないようにする、お昼を食べた後、喫煙所に向かうのではなく公園を歩く、あるいは禁煙のカフェにいきコーヒーを飲む、いらいらした時に喫煙以外で気分転換できる行動を見つける、なるべく煙草の自動販売機がある道を歩かない等、喫煙という行動を起こす「コンタクト」を除外するのです。なるべく喫煙をしにくい状況に自分を置きましょう。悪い習慣を止めようとする時は、意志の力、ウィルパワーよりも、自分の環境を変える方が有効です。
また、悪い習慣を行うことで受けるダメージを認識する事も有効です。喫煙ならば、喫煙によって上がる肺がんにかかる確率、体の免疫力の低下など、喫煙によってもたらされるデメリットを認識します。たばこのパッケージにたばこの害が書いてありますが、一度じっくりその文章を読む、あるいは喫煙の害についてはインターネットでもたくさんの警告がありますのでそれを読む、禁煙外来で医者から喫煙の害の説明を受けるなどです。
その行動を起こすことで自分が受けるダメージを確認します。
アメリカではかって喫煙率は50%を超えていました。喫煙の健康被害が明確になり、政府は国民の喫煙率を下げようと、様々な施策を打ちました。たばこのパッケージにたばこが与える健康被害について写真つきで説明文を載せることを法律で定めました。そして、たばこに高い税金を課し、証明書を見せなければ変えないなどたばこを購入しにくくしました。そして喫煙できる場所を限られたスペースに限定し、少なくしました。禁煙の場所を増やしました。国民が喫煙する機会を減らそうと努めたのです。結果、現代ではアメリカの喫煙率は15%程度に下がりました。
深酒を止めたいなら、お酒を家に置かない。酒好きの友人と会う機会を減らす。酒が出る場にいかないなど、コンタクトを減らしましょう。
食べ過ぎを止めたいなら、余分な食べ物を家の中に置くのを止めましょう。しばらく食べ放題のお店にはいかないようにしましょう。食べる以外に気分転換になる行動を探しましょう。
悪い習慣を完全に断つ事は簡単ではありませんが、コンタクトを減らす、なくすことによって、悪い習慣を行う頻度を減らすことはできると思います。
そのためにも、まず悪い行動を誘発してしまう自分の環境を見直しましょう。