生きていれば怒りの感情を抱くことがあるのは人間として当たり前です。
でも、怒りは相手だけでなく自分自身を傷つけることが多い感情です。
怒りについては次のような特徴があることを知っておきましょう。
- 怒りは両刃の刃。相手も自分も害する事が多い。
- 怒りは爆発すると長引く。
- 怒りが長引くと、もともとの怒りの感情よりも大きくなる。
- 認知のゆがみである「レッテル貼り」「拡大解釈」「一般化のし過ぎ」が起こりやすい。
- 自分の気に入らない場面での怒りは「すべき思考」という認知のゆがみによる場合が多い。
- 相手の嫌いな点ばかりにフォーカスし、良い点を値引きする傾向になる。
怒りは「書いて解きほぐすネガティブ感情シリーズ① 「認知のゆがみ」を発見する」で挙げた「認知のゆがみ」によって引き起こされる事が多い感情だと知っておきましょう。
怒りを感じたら、まずは深呼吸をして、その場では反応せずに、一人になった時にその怒りについてメリット、デメリットを書き出してみます。
その怒りを感じる事は、自分にどのようなメリット(よい点)があるのか、また、デメリット(悪い点)があるのか、書き出してみましょう。
例えば職場の会議で、自分が出して意見を同僚のAさんが「そんなアイディアは現実的ではない」と大声で否定し、あなたはAさんに対し怒りを覚えたとします。
この怒りを感じる自分にとってのメリット
- Aは大声で私の意見をさえぎり、失礼な態度だ。Aにそう言ってやったら気持ちはすっきりするのではないか。
- Aは私の意見を否定する理由を説明していない。Aは根拠もなく意見を言っていると言い返すことでAを問い詰めてAに謝らせれば、気分が晴れるのではないか。
この怒りを感じる自分にとってのデメリット
- 自分の意見を否定されたからといって怒っていたら、自分はチームでは働けなくなる。
- 自分の意見を否定されたなら、Aにその理由を説明するよう言えばいいだけで、怒りでエネルギーを消耗するのはもったいないことだ。
- Aは感情的になっていると思う。感情的なAに同じように感情的に反応したら自分もAと同じレベルだと周囲に思われてしまう。
- Aは根拠もなく私の意見を否定しているとAをとっちめることができても、Aがはいそうですかと納得して謝るとも思えない。
- 私はもともとAのことが好きではないのに、Aのことばかり考えてムカムカしていてバカみたいではないか。自分の時間の無駄だ。
こうして怒りを感じることの自分にとってのメリット、デメリットを書き出すと、意外と怒ることのメリットは少ない事が確認できると思います。怒りを感じたり、怒りを爆発させた場合のデメリットの方が、次々と出てくるのではないでしょうか。怒りを爆発させ相手にやり返せばその一瞬は気持ちがすっきりするのかもしれませんが、その後相手はもっと激しい怒りを返してくるかもしれません。
自分にとってメリットが少なくて、デメリットが多い行動はしない方が自分にとって有利ですよね。怒りが自分自身にデメリットが多いことを文字で確認できれば、怒りの感情は薄らぎ、消化しやすくなると思います。
また、文字で考えを書き出すうちに気持ちが合理的になってくる利点もありますし、隠れている「認知のゆがみ」を発見しやすくなります。
怒りを感じたらその場で爆発させないで、まず自分にとってのメリット、デメリットを書き出してみましょう。
※このシリーズでは、デイビッド・D・バーンズ氏、アーロン・T・ベック氏の研究、著作を参考にしています。