「書いて解きほぐすネガティブ感情シリーズ⑧ 怒りを感じたらメリット、デメリットを書き出す」の例で、怒りの自分にとってのメリットとデメリットを書き出すと多くの場合、メリットは多くなく、デメリットの方が多いことを説明しました。
実際、怒る事は、その場で相手に反撃して一瞬気持ちがスカッとするかもしれませんが、多くの場合その後自分にとってよくない結果を引き出します。怒る事は、他の誰でもなく、自分自身にとって得ではないのです。
しかし、状況によって怒りの感情を持つ事は人間として当然ですので、怒りを持ってはいけないということではありません。怒りがどのような特徴の感情なのかを知っておき、怒りを感じたら、その特徴を思い出し、その怒りを感じることの自分にとってのデメリットを考えましょう。
以下が怒りの特徴になります。ノートに書き出しておいて、怒りを感じる状況でこの「10の怒りの特徴」を読み直しましょう。
10の怒りの特徴
- たいていの場合、怒りはあなたを助けない。
- この世に実際に起こる事ではなく、あなたの「怒りの考え」が怒りを引き起こす。
- 怒りを頻繁に引き起こす考え方は歪んでいる。その歪みを直せば怒る回数は減る。
- 怒りは誰かや何かが不当だとあなたが信じる事から引き起こされる。
- 怒りの強さはあなたが感じた相手の悪意の強さに比例する。
- 怒りはあなたの心の中にだけ存在する幻想の事が多い。
- 他の人はたいていあなたに責められるいわれはないと思っている。
- 報復は人間関係の助けにならず、怒りはかえって関係を悪化させる。
- 怒りは他人に批判されたり、賛同してもらえなかったり、他人が自分の望んだ通りのふるまいをしなかった時に、自尊心を失う事に対する防御から起こる事が多い。しかし、その怒りはたいてい間違っている。
- 挫折感は期待が実現しないことから起こる。その期待が非現実的な予想である事が多い。
前回も書きましたが、怒りの原因が自分の「認知のゆがみ」であることが多いのです。「認知のゆがみ」を通して他の人を見ると「非現実的な予想」を持ちやすくなり、「非現実的な予想」が叶えられなかったと怒りを相手に感じる事が多いのです。しかし「非現実的な予想」は冷静に考えてみると、本当に「非現実的」なのです。
「非現実的な予想」の例を挙げてみましょう。
人が持ちやすい非現実的な予想
- 自分は望む物は必ず受け取ることができる。
- 一生懸命やればいつでも必ず成功する。
- 他の人は自分の標準に達するまで努力する事が当然だ。
- 自分はどんな問題も素早く簡単に解決する能力がある。
- 自分が相手を愛したら、相手も自分を愛さなければならない。
- 皆自分と同じように考え行動するべきだ。
- 親切にされたら、人は皆それに報いるべきだ。
このような事はとても非現実的ですよね?
しかし、私達が怒りを感じる時、このような「非現実的な予想」が実現すると期待している事が多く、それが裏切られたといって怒りを感じるのです。
怒りを感じた時、その怒りを爆発させる前に、「怒りの特徴」リストを読み直して、自分が典型的な怒りの特徴に支配されていないか確認してみましょう。
そして自分が「非現実的な予想」を持っていないか、考えてみましょう。
これだけでも、怒りの感情の量や強さはかなり弱まってくると思います。
※このシリーズでは、デイビッド・D・バーンズ氏、アーロン・T・ベック氏の研究、著作を参考にしています。