オフィス・ライトハウス
ポジティブ心理学実践ワーク
ポジティブ心理学

心は嘘をつく➁サンクコストに惑わされる

私達は自分の心が自分にとって正しい認識をしていると思いがちですが、実は違います。心は嘘をつきます。今まで育ってきた環境や、現在暮らしている社会、溢れんばかりの情報、周囲の人々の言葉などで、嘘や事実でないことを心が信じ込み、それをもとに行動や考えを決めてしまうことがたびたび起こります。

サンクコストは私達が惑わされやすい考え方です。

サンクコスト(sunk cost)は過去に使ったお金や時間、エネルギーなどを指し、埋没費用と呼ばれます。

私達はこのサンクコストに振り回され、自分にとってベストの決断を選ぶことができなくなることがたびたびあります。

例えば1万円のチケット代を払って、ミュージカルを見に行こうと決めました。しかし、当日劇場に行ったら、チケットをなくしてしまったことに気づきました。さて、あなたはもう一枚1万円でチケットを買って、ミュージカルを見るべきでしょうか?それともチケットをなくしてしまったのだから、もうミュージカルは見ないことにするでしょうか?

この時、「既に1万円を払った。ここでもう一枚チケットを買い直したら合計で2万円を払うことになり、このミュージカルに2万円も払う価値はない。ミュージカルを見ることは諦めよう」と思うか。

「このミュージカルはどうしても見たかった。1万円を払ってチケットを買い直してミュージカルを見よう」と思うか。

前者の考えはサンクコストを気にしています。既に1万円払ったという過去の事実から、決断をしています。しかし、サンクコストは過去に払ってしまって回収不可能な費用です。これからどうしたって取り返すことはできません。過去の変えられないサンクコストに基づいて決断することは、私達にとってベストの選択とはいえません。

一方、後者の考えは、サンクコストから離れた決断です。「このミュージカルが見たい」という気持ちが今あり、そのために1万円払ってチケットを買います。既に1万円払ってチケットを買った事は、今ここでは関係ありません。そのミュージカルを今見たいと思うか否かです。

サンクコストに振り回されると、今ここから将来にかけての決断に歪みが生じます。大切なのは、今ここから、今自分の人生が始まったとした場合、どういう決断をするかが重要です。過去に払ったお金はもう回収できないのですから。

その時、そのミュージカルを見たいと思うか否か。1万円を払って見る価値があるミュージカルだとあなたが思うか否かが決断の決め手です。2万円の費用ではありません。

経済学や行動心理学ではサンクコストは重要は意味を持ち、人々の決断に誤った情報を加える要素になりがちです。

お金以外にも時間やエネルギーも、サンクコストに影響されるケースがたびたびあります。

例えば、恋人Aさんと5年もの間交際していたが、昨日Aさんが浮気をしていたことがわかったとします。でも、Aさんはもう浮気相手と別れると言っています。5年もの時間を共にしたから、やはりAさんと交際を続けた方がいいでしょうか。

これも典型的なサンクコストに影響された決断です。

5年という時間がサンクコストになっています。その5年の時間は過去のもので、もう今から回収不可能な費用(この場合は時間)です。

サンクコストに惑わされることなく、今、この時点から、一度浮気したAさんと交際を続けていくか否か、自分はAさんとこれから一緒にいたいと思うのか否か、それだけが決断に重要な材料です。過去に費やした時間はもう回収できないのですから。

人間は過去に費やしたお金、時間、エネルギーにこだわりがちな生き物です。今から回収不可能なサンクコストに囚われず、自分の人生が今この時点から始まったとして、どのような決断をするか、今から未来だけを見て重要な決断を下したいものです。

 

※University of Michiganの講義「Mindware: Critical Thinking for information age」を参考にしています。

心は嘘をつく①間違った確率に惑わされる相関係数...

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