オフィス・ライトハウス
ポジティブ心理学実践ワーク
ポジティブ心理学

心は嘘をつく④エンドーメント効果に惑わされる

サンクコストや損失回避バイアスと類似している私達の心を歪ませる心理に、エンドーメント効果があります。エンドーメントEndowment とは「寄贈されたもの、もらったもの」という意味ですがエンドーメント効果とは「授かり効果」あるいは「保有効果」と訳されます。
既に持っている物に執着し、それらを失うことをとても恐れる心理のことを言います。

これも人間が原始の時代を生き抜いてきた名残です。自分の周りにある物(仲間、家族、食料、飲料など)を失う事が死に直結していた時代は、とにかく保有している物を失わない事が重要でした。
ですから一度手にいれた物を失うことに不安や心配、リスクを感じ、手放したくない、持っていたい、持っていることで安心するという心理を引き起こします。これがエンドーメント効果です。

  • 断捨離できず、もう10年間も着ていない服でも捨てられない。持っている事で安心する。
  • 壊れてしまったラジオをいつか直せるかもといつまでも棚の中にしまっておく。
  • 結婚式の引き出物などでもらった器をせっかく頂いた物だからと、自分の趣味に合わず一度も使ったことがないのに取っておく。
  • 既に関係が破綻しているのに、友達を失いたくないからと我慢しながら関係を維持している友人。
  • 給料もポジションも現在よりも上がる仕事のオファーを受けていても、今の仕事を失うことが嫌で新しい仕事のオファーを引き受けない。

このような心理は、損失回避バイアスやサンクコストも影響していますが、既に保有している物を手放すことを恐れるエンドーメント効果の心理が大きく影響しています。

保有している事は安心できる事ですが、現在保有している物に固執しすぎて、新しいチャンスを逃しているのなら考え物です。あるいは保有への固執のし過ぎで家の中がゴミ屋敷のように物で溢れかえるのならば心理的だけでなく衛生面でも問題です。

エンドーメント効果から脱却するためには、オポチュニティ・コストの法則を考えてみましょう。オポチュニティ・コストの法則とは、すべての行動にはコストが伴うことです。行動は選択と言い換えることもできます。その行動、選択のベネフィット(自分にとっての利益)から、その行動、選択に伴うコストを差し引いて、ネット・ベネフィットを考えてみましょう。ネット・ベネフィットがプラスになるような行動、選択を選び取るのです。

例えば先に挙げた例で考えてみると・・・

断捨離できず、もう10年間も着ていない服でも捨てられない。持っている事で安心する。
  • ベネフィット:服をたくさん持っていることで安心する。せっかくお金をかけて買ったから捨てるのはもったいない(損失回避バイアス)。
  • コスト:着ていない服で埋まっているクローゼットのスペース。入りきらなくて押し入れの中も服が入った箱でいっぱい。収納スペースがなくて、色々な物が外に出しっぱなしで家の中が片付かない。
  • ネット・ベネフィット:服を持っている安心感と、家の中が片付かない事では、プラスマイナスゼロの気がする。
  • ネット・ベネフィットを考えた行動:服をたくさん持っている安心感はやっぱり自分にとって大事だと思うが、せめて持っている服をクローゼットに入りきる分だけにすれば、押し入れにスペースができ、家の中はもっと片付くだろう。
壊れてしまったラジオをいつか直せるかもといつまでも棚の中にしまっておく。
  • ベネフィット:ない。
  • コスト:壊れたラジオを持っていることで収納スペースが取られる。
  • ネット・ベネフィット:マイナスだと思う。
  • ネット・ベネフィットを考えた後の行動:マイナスだと思う。ラジオは捨てる。
結婚式の引き出物などでもらった器をせっかく頂いた物だからと、自分の趣味に合わず一度も使ったことがないのに取っておく。
  • ベネフィット:ない。
  • コスト:自分の趣味に合わない器を持っているという負担感。器をしまっておくスペース。
  • ネット・ベネフィット:マイナスだと思う。
  • ネット・ベネフィットを考えた後の行動:欲しい人があればあげる。植木鉢や花瓶代わりに転用できる物がないか探す。どちらでもなければ捨てる。
既に関係が破綻しているのに、友達を失いたくないからと我慢しながら関係を維持している友人。
  • ベネフィット:友達の数を維持する。
  • コスト:この友達とは正直気が合わないし、話も合わない。会うのは気が進まないし、心理的に負担だ。
  • ネット・ベネフィット:心理的負担の方が大きいと思う。マイナスだと思う。
  • ネット・ベネフィットを考えた後の行動:友達の数が一人減っても問題ない。もうあまり会わないようにしよう。こちらから会おうと誘わないようにしよう。
給料もポジションも現在よりも上がる仕事のオファーを受けていても、今の仕事を失うことが嫌で新しい仕事のオファーを引き受けない。
  • ベネフィット:給料とポジジョンが上がる。
  • コスト:今の仕事を失う。新しい仕事で失敗したらどうしようと怖い。
  • ネット・ベネフィット:給料とポジションが上がるベネフィットは大きい。新しい仕事は不安だが、今の仕事でも失敗しないとは限らない。プラスの方が大きいと思う。
  • ネット・ベネフィットを考えた後の行動:新しい仕事にチャレンジしてもいいのではないか。仕事は職場環境も重要だから新しい職場の人間関係について聞いてみよう。

 

エンド―メント効果がいつも悪いわけではありませんが、保有している事により生じるコスト、あるいは手放さない事によって生じるコストも考えてみましょう。
そして保有している物を手放すと何が得られるのか、自分にとってのベネフィットも考えてみましょう。
何でもかんでも持っている物(人間関係も含めて)を手放さない事に固執しすぎると、新しい機会や人間関係を逃すことにもなりかねません。

 

※University of Michiganの講義「Mindware: Critical Thinking for information age」を参考にしています。

心は嘘をつく➁サンクコストに惑わされるサンクコスト...
心は嘘をつく➂損失回避バイアスに惑わされる損失回避バイアス...

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