職場で感じるストレスに対しダイレクト・レジリエンス・ファクターを鍛えるためには、以下の4種類のストレスの元(ストレッサー)ごとに、解決に取り組むことが効果的であると説明してきました。
- タイム・ストレッサー(時間に関係)
- エンカウンター・ストレッサ―(人間関係)
- シチュエーション・ストレッサ―(職場の環境に関係)
- アンティシぺイション・ストレッサー(予想する事に関係)
このうちエンカウンター・ストレッサーは、人間関係によって生まれるストレスの元ですから、複数の人間が集まって作業する職場では頻繁に発生するものです。しかし、エンカウンター・ストレッサーが発生したからといって、怒りや悲しみ、いらいらや屈辱感などのストレス反応を必ず自分に生み出さなければならないわけではないのです。
タイム・ストレッサーと同様、エンカウンター・ストレッサーもどう受けとめるかが重要です。
まず、複数の人間が集まるとエンカウンター・ストレッサーが生まれることは当たり前だということを理解しましょう。各々がセルフ・インタレスト(自分にとっての利益、メリット)に基づいて考え、行動します。そのセルフ・インタレストが全く同じでない限り、各々のセルフ・インタレストを最大化しようとして行動する人間同士の間にぶつかり合いや意見の差異が生まれても自然なことなのです。
人間は原始の頃からセルフ・インタレストを最大化するために考え行動して生き延びてきました。セルフ・インタレストが侵される、害されると感じると、ファイトORフライト反応が起きます。闘うか逃げるか反応です。これは現代の私達も同じです。
ジャングルで虎に襲われてセルフ・インタレスト(自分の命の存続)が害されることはなくなっても、職場の上司と折り合いが悪くて、セルフ・インタレスト(自分の価値観や職場における自分の役割)が害されると感じ、ファイトORフライト反応が引き起こされます。職場でファイト反応は怒りに、フライト反応は無気力や孤立に繋がります。
このファイトORフライト反応が起こった時に、その原始の人類の反応のままに行動するのか、それとも21世紀を生きる人間として、原始の反応から抜け出すのか。それによってストレッサーへの反応の仕方は大きく異なってきます。
一方、自分ばかりストレスを受けていると感じているかもしれませんが、実はあなた自身の考えや行動が、他の人のストレッサーになっていることが十分ありえるのです。
折り合いが悪いと感じている職場の上司。その上司と一緒の会議では憂鬱になるし、仕事にあれこれ注意されてストレスだとあなたが感じているとします。その場合、その上司も部下であるあなたに対し、いつも暗い顔をして自分に打ち解けない、仕事でミスが多くて安心して仕事を任せられないと、ストレスを感じるかもしれないのです。
職場で自分の価値、能力を認められたいというあなたのセルフ・インタレストと、頼れる明るい部下を持ち仕事を効率よく進めて評価を高めたいという上司のセルフ・インタレストが、ぶつかってお互いにストレス反応を引き起こしているかもしれません。
- 複数の人間が集まれば、エンカウンター・ストレッサー(人間関係によるストレスの元)が生まれるのは自然なこと。
- 人間は各々セルフ・インタレストを最大化するために行動している。
- エンカウンター・ストレッサーを受けたからといって、怒りや無気力などの反応ばかりしていたら原始の人類のファイトORフライト反応の同じレベルになる。
この3点を覚えておきましょう。
※Macquarie University 「Build personal resilience」の講義を参考にしています。