ポジティブ心理学が生まれる前から、ポジティブ心理学の真髄を表す先人達の名言があります。そして、ポジティブ心理学の研究が盛んになっている現代においても、ポジティブ心理学の提唱する「ポジティブな感情によって、逆境を乗り越え、挑戦を続けて人生に充実感を感じられる」事を象徴する名言があります。
今回は老子の名言を紹介したいと思います。
老子
知足者富
足るを知る者は富む
「満足を知る者は豊かである」という意味です。
あれが欲しい、あれを持っていないと際限のない欲求の虜になったり、持っていない物について不満ばかり抱えているのではなく、自分が今持っている物、状況に感謝することの大切さを述べています。
ただ、現状に満足してそのまま現状維持でいる事が幸せだと言っているわけではありません。
老子は「知足者富」に続けて
強行者有志
と書いており、これは「努力できる者には志がある」という意味で、自分の置かれた状況に感謝しながらも、更に努力を重ねていく事こそ人生を充実させると説いているのです。
前回、ハーバード大学の社会科学者、アーサー・ブルックス氏が幸福の定義を
Happiness = Enjoyment + Satisfaction + Meaning
ハピネス=愉しみ+満足感+生きる意義
と提唱していると書きましたが、「知足者富」はSatisfaction満足感に当たると考えられます。
ブルックス氏によれば、人の幸福感は、What you want (あなたが欲しい物)とWhat you have(あなたが持っている物)の比較によって大きく影響されるとしています。
What you have ÷ What you want
この数字が大きくなればなるほど、満足感は増し、数字が小さくなればなるほど満足感は減っていきます。
「欲しい物」が無限大にあり、「持っている物」がほんの少ししかないと考えるならば、この数字はとてつもなく小さいものになり、人生に不満や不平の思いを強くすることでしょう。
逆に、「持っている物」に感謝し、もう十分いろいろな物を持っていると感じれば、この数字は大きくなり、人生に満足感を感じやすくなります。
何も持っていない・・・と思っても、実は私達は既にいろいろな物を持っています。
普段は「欲しい物」に惑わされて、見えていないだけかもしれないのです。
- 直接戦争にさらされていない。
- 自由に自分の意見を述べることができる。
- 食べる物がある。
- 住む所がある。
- 仕事があって生活の糧を得られる。
- 家族がいる。
- 悩みを話せる友人がいる。
- 尊敬できる職場の先輩がいる。
- 読みたい本がたくさんある。
- 憧れの「推し」対象がいる。
- 電気や水道などライフラインに困っていない。
自分が持っている、感謝できる対象を書き出してみると、「What you haveあなたが持っている物」を再確認できて、幸福の重要な構成要素の一つ、満足感が味わえると思います。
※Harvard University Arthur Brooks 「Managing Happiness」の講義を参考にしています。