マーティン・セリグマンは、ポジティブ心理学を確立し、現在進行形でポジティブ心理学の研究を行っているペンシルバニア大学の教授。この人なしにポジティブ心理学という比較的新しい心理学の分野は成立しなかったでしょう。セリグマン教授のペンシルバニア大学におけるポジティブ心理学の講義は、実践的で私達が日々生きていく上ですぐに役立つスキルが豊富に示され、素晴らしい内容です。
このセリグマン教授。現在80歳。コロナにもかからず、今なお研究を続け新しい本を出版したばかり。その彼が、イェール大学でウェルビーイングの研究をするローリー・サントス博士のポッドキャスト「The Happiness Lab」に登場しました。「人間はどうすれば充実感や幸福感を得ることが出来るか」という研究において両者とも第一人者です。この二人の対談がとても興味深かったので紹介したいと思います。
PERMA
セリグマン教授が人生に充実感や幸福感を感じるために私達に推奨しているのは「PERAMの実践」と「自分の強みを使う」ことです。
PERMAとは
P: Positive emotion(ポジティブな感情)
E: Engagement(熱中)
R: Relationship(人間関係)
M: Meaning(人生の意義)
A: Achievement(達成感)
を指します。
人生に充実感を感じたいなら、PERAMの要素を追求することをセリグマン教授は勧めています。PERMAをどのように追求するかについては、「PERMAの実践シリーズ」で紹介していますので、参考にして下さい。
自分の強み
「仕事との向き合い方をもう一度考えてみよう➂ 自分の強みを知りましょう」で説明しましたが、自分を幸福な状態にするためには、まず自分の強みが何かを確認し、それを職業に使っていけるかどうかを考えてみる事が効果的です。
そして、自分の強みを知るための方法としてVIAの診断ツールがあります。VIAはアメリカの研究所で、VIA=Values in Actionです。VIAの強み診断ツールはVIA -ISと呼ばれていて、これはValues in Action Inventory of Strengthを意味しています。既に世界中の250万人もの人々に使用されて、科学的にその効果が検証されています。
VIA-ISで診断される強みには24種類あります。そのうちの上位5種類の強みがSignature Strength(シグニチャー・ストレングス)=「自分の強み」となります。VIA診断テストの受け方については「仕事との向き合い方をもう一度考えてみよう➂ 自分の強みを知りましょう」で紹介しています。
ちなみにセリグマン教授のシグニチャー・ストレングスは
- Creativity(創造力)
- Appreciation of beauty(審美眼)
- Leadership(リーダーシップ)
だそうです。
まず一つ実行するなら
PERMAを実践する行動を取ったり、「自分の強み」を活かすための行動を取る事が、ウェル・ビーイングに重要なのですが、一度に幾つもの新しい行動を取ることはハードルが高いと思います。そこで、セリグマン教授が、今すぐ一つ実行を勧めているアクションがあります。
- 今の仕事で一番やりたくない事、苦手な事を思い浮かべる。
- そのやりたくない仕事に「自分の強み」をどのように使えるかを考えて実行する
番組の中では学生の一人の行動が紹介されていました。その学生は図書館で自分の研究のために毎日夜遅くまで勉強していました。夜中近くになって家まで帰る道のりが疲労と寒さと暗さでとても憂鬱なものでした。そこで彼は自分の強み、ユーモアを使って、憂鬱な帰途を自分にとって意味のあるものに変えようとしてみました。帰り道をストップウォッチで計測し、どのルートで変えればどれくらいの時間がかかり、どのルートが最も早く帰宅できるかを探求したのです。今までは憂鬱で疲れただけの自宅への道のりが、一日の最後のお楽しみに変わっていきました。
自分の弱み、弱点、不足している点にフォーカスするのではなく、自分の強みにフォーカスし、自分の強みを、苦手な分野にこそ使ってみる事が、自分の強みをますます強化し、可能性を広げ、問題解決への道を開くのです。
自分が嫌だなと思っている仕事こそ、自分の強みを活かしてどのように変容させる事ができるか、試してみましょう。自分の能力のストレッチ、自分自身へのチャレンジです。
それを繰り返していると、自分の強みはレベルアップし、自分肯定感が強まっていきます。
※Laurie Santosの The Happiness Lab 「The man who invented happiness science: Marty Seligman」を参考にしています。