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ポジティブ心理学実践ワーク
ポジティブ心理学

チェンジを起こすためのワーク④ 対リアクタンス戦略その3:ハイライト・ギャップ戦略

「チェンジを起こすためのワーク① 変化を妨げる要因 REDUCEを知る。」で説明したように、人間が変化や新しい挑戦を受け入れるためには、変化に対する障害REDUCEを減らす、あるいはなくす事が有効です。

チェンジを起こすためのワーク① 変化を妨げる要因 REDUCEを知る。ポジティブ心理学...

Rの「Reactance:リアクタンス、抵抗」を緩和させるための方法として「3つの選択肢を用意する」「アスク戦略」を紹介しました。もう一つ「ハイライト・ギャップ戦略」を紹介します。
Highlight the gap. ギャップにハイライトを当てます。

何のギャップかと言いますと、「自分の思考」(英語ではThoughtといいますが、この場合理念に近い意味です)と「自分の行動」のギャップです。

頭の中ではこうした方がいい、こうすべきだと思っていても、実際の行動では違う行動、あるいは逆の行動を取ってしまう。人間にはよくある事です。
しかし、それが自分の心身にとって重要な事である場合、「自分の思考」と「自分の行動」が対立していると、cognitive dissonance認知的不協和という症状になり、何とも居心地悪く、自分自身に嫌気が指してきます。この認知的不協和がひどくなると、自分を肯定できなくなり、自己否定は自信喪失に繋がっていきます。

「自分の行動」と「自分の思考」のギャップをなくし、一致させるための行動を取るためにはどうしたらよいでしょうか?
まずは「ギャップがある」事を認識しましょう。
自分の理念や考えと、自分が取っている行動は矛盾しているということを認めます。
これが「ハイライト・ギャップ」です。そのためには、「これを他の人に勧めるだろうか?」と自分に問いかけてみるとよいでしょう。

  • (お酒の量を控えないといけないと思っているのに)深酒をする。
  • (睡眠時間を6時間は取りたいのに)夜更かしして睡眠不足になる。
  • (試験が近いから計画的に勉強したいと思っているのに)SNSばかりしている。
  • (他の人からアドバイスがほしいのに)他人の意見に反抗ばかりしている。

このような行動を、自分の子供や親や親友に、同じ行動を勧めるでしょうか?
自分の子供や親や親友相手であれば、本当はどういう行動を勧めたいでしょうか?

タイ保健局のハイライト・ギャップ禁煙キャンペーン

タイの保健局がうった禁煙キャンペーンが大成功を収めたことがあります。
タイでは大人の喫煙率の高さも問題でしたが、10代やそれ未満の子供達の喫煙率の高さも大きな社会問題でした。しかし子供達は大人の喫煙行動を真似しているのです。そこでタイの保健局は大々的に禁煙キャンペーンCMを流しました。子供達が煙草を吸っている大人達に「煙草をくれ」と頼みます。大人は「煙草は健康に悪いからだめだよ」と子供達に断ります。すると子供達はその大人達に紙を一枚渡します。大人達が紙を開くと、こう書かれていました。
「喫煙が健康に悪いとわかっているなら、なぜあなたは煙草を吸い続けるのですか?」
大人達ははっとします。これはまさに「ハイライト・ギャップ」戦略です。対象者達は「喫煙は健康に悪い」という「思考」と、「喫煙している」という「行動」の矛盾を認識したわけです。
このキャンペーンは大きな反響を呼び、タイの喫煙率を下げることに結び付きました。

健康でいたいのにコンビニ弁当ばかり食べている自分

自分の中で「理念、思考」と「行動」が矛盾していることはありますか?
例えば、「健康でいたい」と思っているのに、毎日コンビニのお弁当や総菜で食事をすませている場合、「思考」と「行動」が矛盾しています。「健康でいたい」という思考に矛盾しない行動を考えてみましょう。

  • せめて朝食だけは手作りでバランスがとれたメニューにする。
  • コンビニのお弁当を食べるにしても揚げ物は避ける。
  • お昼はお弁当を持って行く。

「健康でいたい」という思考に合致した行動を取ってみましょう。

会社のプロジェクトが上手くいっていないが捨てがたい

あるいは会社でずっと上手くいっていないプロジェクトがあるとします。これまで多くの時間とエネルギーとコストを費やしてきただけに、そのプロジェクトを捨て去る決心がつきません。本当は効率よく、生産性のあるプロジェクトを優先させたいと思っているのですが、これまで労力をかけてきたプロジェクトなので捨てがたいのです。
その時は、もし新しいマネージャーが違う会社からやってきたと仮定して、そのマネージャーに、このプロジェクトを続けることを推薦するかどうか考えてみましょう。「いや、それはしない」「他のプロジェクトを優先させた方がいい」そう思うなら、古い上手くいっていないプロジェクトは諦めましょう。

変化が自分達にとってよいものだ、必要なものだとわかっていても、新しいことをすぐに受け入れらないのが人間です。変化にはリアクタンス(抵抗)を見せてしまうものだと理解した上で、その抵抗を和らげる、あるいは無くす方法を取ってみましょう。

※University of Pennsylvania,Jonah Berger「Removing barrier to change」の講義を参考にしています。

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