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チェンジを起こすためのワーク⑧ 対ディスタンス戦略その1: ムーバブル・ミドルを探す

「チェンジを起こすためのワーク① 変化を妨げる要因 REDUCEを知る。」で説明したように、人間が変化や新しい挑戦を受け入れるためには、変化に対する障害REDUCEを減らす、あるいはなくす事が有効です。

チェンジを起こすためのワーク① 変化を妨げる要因 REDUCEを知る。ポジティブ心理学...

REDUCEのDはDistance ディスタンス変化や新しい情報との距離を指します。

人間は誰しも自分が許容できる範囲アクセプタンス・ゾーンを持っていて、そのゾーンの真中に受け入れられる新しい情報や変化ならば、許容しやすいのです。アクセプタンス・ゾーンから遠く離れたような情報には、拒否反応を示しやすいのです。

また、対象が身近になればなるほど、このアクセプタンス・ゾーンははっきりしてきます。対象に対する好き嫌いが明確になってくるのです。

新しい情報を受け入れ、変化を起こすためには、アクセプタンス・ゾーンに入るか、人のアクセプタンス・ゾーンを広げるか、アクセプタンス・ゾーンに該当する人を見つける事が有効です。

ムーバブル・ミドルに訴えるアメリカの選挙

例えばアメリカの総選挙でよく行われる戦略がムーバブル・ミドルを探して、その人のアクセプタンス・ゾーンを特定し、そのゾーンに入るよう具体的なマニフェストを訴える事が有効とされています。ムーバブル・ミドルMoveable Middleとは、固定した支持政党を持たず、働きかけによってはどの政党にも投票する傾向がある人々で、人口の2割~8割いるとされています。そしてムーバブル・ミドルが一番関心が高い物事に対して、政治メッセージを発すると、支持されやすいという結果が出ています。

職場でも使えるムーバブル・ミドル

これは私達の職場でも使えます。
新しい商品の企画書を通したい。上層部を説得したい。こういう場合、何度も熱心に新商品の必要性を訴え続けるという方法もあるでしょうが、ムーバブル・ミドルを動かしてみる方法もあります。

例えば新商品の企画を通すためには5人の部長からオーケーを貰わないといけないとします。5人のうち1人は、新商品案に強硬に反対しています。もう一人は新商品案に賛同してくれています。しかし、残りの3人は、結論は出せない、もう少し検討の時間が必要だとして意見を先延ばしにしています。
この3人がムーバブル・ミドルだとして、この3人のアクセプタンス・ゾーンを探して、そのゾーンの中に入るようにします。

3人は、新しい商品を出して、新しい市場を開拓する必要性を感じてはいますが、そのためのコストが巨額になるのではないかと心配しています。また、失敗した時にかけたコストが無駄になって、会社の利益を圧迫することを心配しています。

そこで新商品の企画について、コスト管理について説明したページを一枚増やし、新商品の製作にかかるコストの見積もりを詳しく説明し、当初の見積もりも現在は20%コストがカットできている事を説明します。加えて、初めから大々的に新商品を売り出すのではなく、パイロット商品として特定のユーザーをターゲットにお試し使用してもらい、そのフィードバックを得た上で、更に商品性を改善してから本格的な大量製作に入ることを提案します。

ムーバブル・ミドルの「コストが心配」という関心にフォーカスして、「コストはしっかり管理している。可能な限りコストを圧縮する工夫がある」事をメッセージとして伝えます。「コストは管理されている」ということで、新商品の案は、この3人のアクセプタンス・ゾーンに入る可能性が高くなります。
5人のうち4人が賛同すれば、もう1人も考え直す可能性が高くなりますし、残りの1人が反対を続けたとしても、新商品案が通る可能性は高くなります。

新しい挑戦をする時に説得しなければならない人がいる場合は、その人が許容できる範囲、アクセプタンス・ゾーン内に、新しい変化や挑戦が入るよう調整してみましょう。

※University of Pennsylvania,Jonah Berger「Removing barrier to change」の講義を参考にしています。

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