STDはSelf Determination Theoryの略で、日本語では自己決定理論と訳されます。心理学者であるリチャード・ライアンRichard Ryan博士を中心に、人間が行動する際のモチベーション(動機)を研究し、どのようにモチベーションアップをしていけばよいかを論理的に示しています。
このSTDを理解することで、仕事における自分や同僚、部下のモチベーションをアップさせる事ができます。
仕事にしろ何にしろ、嫌々やるよりは、自分から進んで行動したくなる気持ちになると、満足感や成功の確率(パフォーマンス)が違ってきます。
モチベーションの仕組みを理解して、モチベーションアップに繋げていきましょう。
まず、モチベーションとは何なのかを理解しておきましょう。
ある行動をしようとする動機、理由がモチベーションになりますが、大きく2種類に分かれます。Intrinsic Motivation(内発的モチベーション)とExternal Motivation(外発的モチベ―ション)です。
内発的モチベーションは、自らその行動を起こしたくなる、その行動を行う事が楽しいケースです。画家が絵を描く事が楽しい、子供が積み木で遊ぶのが楽しいなど、誰に強制されなくても、自分がこうしたいと思い行動します。
この内発的モチベーションは、本能、遺伝、環境、周囲の人々からの影響、共感により培われる事が多いです。内発的モチベーションによる行動は、自分が望んでする行動ですから、自発的であり、継続性があります。内発的モチベーションを基に行動できれば、人は進んで動いていきます。
一方外発的モチベーションは、お金などの報酬、あるいは「そうしなければならない」という社会的義務、家族を養うなど、自分の外からくる行動の理由です。
一般的に、外発的モチベーションよりも、内発的モチベーションの方が、モチベーションの質が高く、継続性があり、パフォーマンスもよくなる傾向にあります。
では、どのように内発的モチベーションを養えばよいのでしょうか?遺伝や本能、環境など自分でコントロールできない要素もあるので、難しい部分もありますが、内発的モチベーションを培いやすい状況を整える事は可能です。
- Autonomy自律性:誰かに強制されたのではなく自ら決定し行動できる
- Competence有能さ:行動を行う能力がある、あるいはその能力を身に付ける事ができる
- Relatedness関係性:集団に関係していて、自分と他の人との相互理解、影響がある。
この3つの要素が、内発的モチベーションの誘発に有効です。
特に「自律性」は重要です。
- Independence:自分で決定できる。
- Individualism:他の人に依存することなく自分でできる。
- Absence of demand:命令や強制がない。
- Freedom:自己裁量の部分が多い。自分で選択できる。
「自律性」には上記の4つの要素が含まれ、「自律性」がある事が内発的モチベーションを誘発します。
仕事の場合、多くの人が「仕事がしたい!」とう内発的モチベーションに動かされているのではなく、「仕事をしなければならない」「仕事をするよう促されている」「報酬を得たい」という外発的モチベーションに動かされていると思います。仕事が好きでたまらなくて、楽しくて仕方がないという人は、存在するとしても稀だと思います。
しかし、仕事をするモチベーションが「内発的モチベーション」に近づくよう、仕事の環境を整える事は可能です。
仕事全部を「内発的モチベーション」に結び付ける事は難しいとしても、一部を「内発的モチベーション」とリンクさせる事は可能です。
「内発的モチベーション」を培う重要な3要素「自律性」「有能さ」「関係性」を、仕事の中に見つけ出していきましょう。
次回はその方法を紹介したいと思います。
※University of Rochester, Richard Ryanによる「Introduction to Self Determination Theory」の講義を参考にしています。