「外発的モチベーション」を「内発的モチベーション」に近づかせ、継続性のあるハイクオリティのモチベーションを持つために、「内発的モチベーション」を培う3つの要素「自律性」「有能さ」「関係性」を、「外発的モチベーション」の中に取り入れていきましょう。
そのためには職場における同僚、上司の行動、言動は大変重要になります。「自律性」「有能さ」のサポートの方法について説明してきましたが、今回は「関係性」のサポートについて説明しましょう。
問題にぶつかった時こそどのようにサポートするかが大事
職場での「関係性」をサポートし、仕事仲間に仕事に対して積極的に取り組んでいこうというモチベーションを培ってもらうには、チャンレンジに直面した時こそどのように同僚や部下をサポートするかが鍵になります。
問題や失敗、予想していなかった困難に直面する事は、仕事をしていく上でよくあります。
その時に困っている、あるいは落ち込んでいる同僚や部下に「あなたはだめだ」と叱ったり批判したりする事は、彼らのモチベーションを下げることは容易に想像できると思います。
一方で、彼らを助けすぎてもよくありません。「私が処理しておくから」「あなたに任せられないから私が管理する」と彼らの「自律性」を取り上げるような言動は慎みましょう。
「この問題はあなただけの問題ではない、私を含めてチーム全体の問題。どうすべきか、みんなで話し合いましょう」
「この問題はたまたまあなたが引き起こした事かもしれないけれど、私達誰にでも起こりうる事態。どう対処したらいいか、一緒に考えていきましょう」
このように、同僚の「自律性」を尊重しながらも、同僚がチームという組織の一員であると認識してもらう事(Inclusion:仲間であるという認識)と、みんなで解決に向けて相談しようという支援の表明(Warmth:温かい感情)が重要になります。
同僚に組織の一員であり、みんなでサポートし合うと理解してもらう事によって、問題解決へのエネルギーになり、仕事や職場仲間へのコミットメントが深まります。
一人の同僚が引き起こしてしまった失敗を組織でシェアして、解決方法を探し、その方法を実行する事で、組織全体のスキルアップに繋げる事もできます。
その時起こした失敗経験が、後々成功に結び付くかもしれません。
問題が起きた時こそ、同僚や部下との関係性を強めるよう、その機会を活用していきましょう。
上司は部下へのメッセージに注意を払うべき
上司から部下に接する場合、部下は上司の感情や言動をよく見ています。自分が上司から好かれているか、信頼されているか、評価されているかに敏感です。それは、上司が部下から好かれているかどうか、信頼されているかを気にするよりも、数倍敏感になっています。
上司の方は部下に対し「あなたのことを信頼している」「人間として好きだ」「組織に必要な人間だと思っている」というメッセージを、常に発信するようにしましょう。言葉でもよいですが、顔の表情やボディ・ランゲージも大切です。「私は上司に好かれている」という気持ちは、意外なほど大きく部下のモチベーションに影響します。組織をスムーズに運営し、仕事の業績をアップするチームにしたいなら、自分の部下に対する言葉や行動が(それは無意識なものかもしれませんが)部下のモチベ―ションを下げていないか気をつけましょう。上司の方は意識して、どう受け止められるかを想像してから、部下にメッセージを出す事が大切です。
※University of Rochester, Richard Ryanによる「Introduction to Self Determination Theory」の講義を参考にしています。