ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授と、職場でのウェル・ビーイングな働き方を研究しているBetterUpLabのガブリエラ・ローゼン・ケラーマン博士が共著で2023年1月に出版した本『TomorrowMind: Thrive at Work with Resilience, Creativity and Connection』。
前回説明したように、今私達はVUCAという大きな変動の世界を生きていて、変革のスピードはどんどん速くなっています。仕事を巡る環境もそうです。
学校を卒業して、新入社員で会社に入り、先輩から一から仕事を教えてもらい、会社が提供してくれる研修で訓練し、組織の一員として与えられた仕事をこなし、出世コースに乗る人もいれば出世を諦める人もいて、定年の60歳まで同じ会社で働き続け、仕事の内容もほぼ同じ。可もなく不可もなしの仕事であっても、まあまあ定年まで勤められる。年功序列がまだ生きていて、年を重ねれば、係長なり課長なり部長なり、何等かのタイトルがついてくる。
そんな状況は変わりつつあり、あと数年のうちに激変していくでしょう。
仕事は内容が変わって当たり前、違う会社に転職するのも当たり前、自分で新しいスキルを磨いて当たり前、年功序列は崩れて当たり前。そんな世界で多くの人はこれから働いていくことになるのです。
そのような世界では、自分が持っているソフトスキルが重要になってきます。この本でいうTomorrowmindというマインドセット(心構え)がキーになるわけです。結論から言いますと、Tomorrowmindは何かというと
- 変化を予測し
- 適切な対応策や計画を建てられ
- 問題や障害にも立ち向かえることができて
- 自分の持っている能力や可能性をフルに生かせる
そういう心構え、心理能力のことを言います。
Tomorrowmindで仕事やそれを取り巻く変化に臨めば、職種や業界を関係なく、職場で生き残るだけでなく、能力を発揮して充実できるとこの本では提唱しています。
そして、Tomorrowmindの心構えを持つためには、5つの能力を培う事が必要であるとしています。その5つの能力の頭文字をとって、PRISM(プリズム)と呼んでいます。
- Prospection (P): 見通しを持つ。人間は悪い未来を想像する事が得意ですので、何が起きても備えられるように未来を予想し、計画する能力。
- Resilience (R):レジリエンス。回復力。変化や不運から回復し、更に強くなる能力。
- Innovation and creativity (I): 革新と創造。問題に対して、新しい、驚くような、そして役に立つ解決方法を見つける能力。
- Social support, by way of rapid rapport (S): サポート。違いや地理的距離を超えて人間関係や信頼を素早く構築できる能力。
- Mattering and meaning (M): 意義や意味を見出す。変化を経ても仕事をするモチベーションを燃やし続ける能力。
PRISMの5つの能力は、今から練習によって身に付ける事ができます。PRISMを自分のものにすれば、結果的にTomorrowmindの心構えになり、仕事にどのような変化が訪れても、問題に直面しても、乗り越えて、自分の経験値を上げ、仕事を通じて充実感や達成感を得る事が可能です。
Not only survive, but also thrive
ただ生き残るだけでなく、栄える
というフレーズがありますが、この本では、変わりゆく仕事環境の中で自分の席があるように守るだけでなく、変化をチャンスに変えて更に栄えていく(成長していくと同義語です)方法がある、それがPRISMというソフトスキルであると提唱しています。
PRISMの5つの能力の中でも、最も重要なのがRのレジリエンスです。次回からはレジリエンスを身に付ける方法について紹介していきましょう。
※Martin Seligman, Gabriella Rosen Kellerman『TomorrowMind: Thrive at Work with Resilience, Creativity and Connection』を参考にしています。