ポジティブ心理学｜オフィス・ライトハウス

ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授と、職場でのウェル・ビーイングな働き方を研究しているBetterUpLabのガブリエラ・ローゼン・ケラーマン博士が共著で2023年1月に出版した本『Tomorrow Mind: Thrive at Work with Resilience, Creativity and Connection』。訳すと「トゥモローマインド：レジリエンス、クリエイティビティ、コネクションで仕事を通じて充実して生きる」ということになります。

Tomorrowmindを構築する５つの要素PRISMのうち、最も重要な要素はR:Resilinecレジリエンスです。レジリエンスは後天的に、練習によって身に付けることが可能です。

そのための５番目の練習方法はCognitive Agility、認知の柔軟性を鍛える事です。

Cognitiveは認知、認識する事、Agilityは柔軟性、弾力性を意味します。Cognitive AgilityはCognitive Bias、認知バイアスの反対の能力です。この本の中では「Ability to mentally move back and forth among many possible scenarios」（多くの可能性を考えて検討する能力）と定義しています。
一言でいえば、様々な選択肢を見つけられる能力です。

人は不運や不幸、難局に直面すると、「もうだめだ」「もうどうしようもない」「私には～しかない」「私は～するしかない」など、一つの選択肢（しかも大抵は最悪の選択肢）しか見えなくなってしまう傾向があります。心理学ではこの現象をカタストロファイジングと言います。カタストロファイジングに陥ると、冷静で論理的な状況分析ができません。非現実的で最悪の結果ばかりを想像し、パニックになり、「～しかない」と一つの選択肢しか見えなくなってしまうか、すべてを諦め無気力になります。

カタストロファイジングに陥る事を避けて、どんな状況でも、複数の選択肢を考えられる能力、そして複数の選択肢の中から自分の行動を選択できる能力が、認知の柔軟性です。

不幸、不運、障害、失敗、不安がない人生はありません。でも、悪い出来事に直面したり、困った状況に陥るたびに、カタストロファイジングになって最悪の出来事ばかり想像し、恐れていたら、前へは進めません。むしろ、無気力に向かって後退してしまいます。

そこで認知の柔軟性を鍛えて、悪い出来事に遭遇しても乗りけられる、回復できる、立ち向かっていける力を養いましょう。

具体的にどう認知の柔軟性を鍛えるかというと、この本では、障害や不運に直面した時に、その状況に対し３つのケースを考えることを推奨しています。

「レジリエンスを身につけるワーク⑩　３つのケース策定をしましょう。」でも説明していますが、ワースト・ケース、ベスト・ケース、プロバブル・ケースの３つのシナリオを考えるようにしましょう。紙に書き出すとよいと思います。また、書く順番が重要です。必ず、ワースト・ケース→ベスト・ケース→プロバブル・ケースの順番で書きましょう。

まずワースト・ケースを考えます。その問題によって起こりうる最悪の事態は何かをあえて考えます。それを紙の左側に書きます。
次にベスト・ケースを考えます。その問題に関連して起こりうる最善の事態は何かを考えます。それを紙の右側に書きます。
次にプロバブル・ケースを考えます。起こる確率が高い中間ケースを考えます。
ワースト・ケース、ベスト・ケースを線で繋ぎ、その中間にプロバブル・ケースを書きます。
ある問題や不安について、最悪のケースと最善のケースを認識する事で、事態のインパクトの振れ幅を目で見て認識します。そして、プロバブル・ケースをみて、実際に起こりそ
うな事態を確認します。
その後で、プロバブル・ケースが起きた場合に備えて自分ができるアクションはあるか考えてみます。

３つのケースを策定することによって、「これしかない」という一つのシナリオしか見えなくなっている自分の心に選択肢を示します。これが認知に柔軟性を持たせることです。