ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授と、職場でのウェル・ビーイングな働き方を研究しているBetterUpLabのガブリエラ・ローゼン・ケラーマン博士が共著で2023年1月に出版した本『Tomorrow Mind: Thrive at Work with Resilience, Creativity and Connection』。訳すと「トゥモローマインド:レジリエンス、クリエイティビティ、コネクションで仕事を通じて充実して生きる」ということになります。
Tomorrowmindを構築する5つの要素PRISM。
PはProspection。 プロスペクション。見通しを持つ。人間は悪い未来を想像する事が得意ですので、何が起きても備えられるように未来を予想し、計画する能力です。
ホワイトウォーターと呼ばれる変化が頻繁に、そして大きく怒っていく現代において「今までこうしてきた」「今の作業だけやればいい」という過去と現在しか見ていない自分になると、職場や産業で起こっていく変化の波についていけなくなるリスクがあります。あるいは先が見通せず、自分の将来に希望が持てないということにもなりかねません。そのような個人ばかりで構成される会社であれば、その会社も先行きが不安定になってきます。
自分の周りに、自分の仕事に、自分の勤めている会社や業界に、あるいは社会全体に何が起こっていくのか、先を見通し備えていく能力は、これからますます重要になっていくでしょう。
- 電車の改札の切符切りの仕事は、自動決済システムの導入、そして切符ではなくカードやスマホでの決済機能導入によって、消えました。
- ミーティングはフェイス・ツー・フェイスでなければならないという固定概念は、コロナ感染危機を経て、崩れ去り、オンラインでのミーティングが一般化しました。
- スーパーのレジ打ちの仕事は、セルフレジの導入拡大、消費者側の慣れによって、あと数年もすればなくなる可能性が高い仕事です。
- 出前は蕎麦屋かラーメン屋などの一部の店のサービスと思っていたら、多くの飲食店が参加し、多くの消費者がデリバリーを頼む時代になりました。
- 新聞は四つ折りにして電車の中で読むものという概念も、スマホやアイフォンで電子版の新聞を読む人が増える中、消えつつあります。電子版を読むなら、新聞を自宅に配達してもらう必要もなくなります。
ちょっと私達の周りを見渡しただけでも、多くの変化がここ数年の間に置き、社会や産業構造、企業や消費者の在り方を変えていっています。
あと5年、10年の時間が経過したら、どのような消費者ニーズが生まれ、どのような企業がそのニーズに応えているでしょうか?
未来を的確に予想し備えていく事は、個人にとっても、企業にとっても、重要なスキルになってきているのです。
『Tomorrowmind』によると、未来を考えて予想するプロスぺクションのスキルは、2つにフェーズに分けられます。
フェーズ1
どのような未来になってほしいか?どのような未来に自分は存在したいか?と考えるプロセス。比較的楽観的で、素早い思考に基づき、全般的な広がりを見せます。
フェーズ2
フェーズ1で考えた未来、あるいは未来の自分に到達するために、どのようにすべきか?どうしたらそういう未来に到達可能になるか?を考えるプロセスです。悲観的になる事も多く、思考スピードはゆっくりで、一つの事にフォーカスしすぎたり、大げさに考えたりする傾向があります。
フェーズ1も、フェーズ2も、練習で鍛えることができます。つまり、練習によって、プロスぺクションの能力は鍛えることができるということです。次回はその練習方法を紹介していきましょう。
※Martin Seligman, Gabriella Rosen Kellerman『TomorrowMind: Thrive at Work with Resilience, Creativity and Connection』を参考にしています。