イエール大学のウェルビーイングの人気講座のローリー・サントス教授のポッドキャスト「The Happiness Lab」で、ビッグ・フィーリング(激しい感情)が押し寄せた時の対処法として紹介されていたエモーショナル・コーピングキット・ボックスを前回説明しました。
他にも激しい感情(特に怒りや絶望などの負の感情)に対処する方法として「54321」が紹介されています。
5:見えるものを5つ挙げる
4:聞こえるものを4つ挙げる
3:タッチできるものを3つ挙げる
2:香りや匂いを嗅げるものを2つ挙げる
1:味わえるものを1つ挙げる
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の5つの感覚をフルに活用するわけです。
最後の「味わえるもの」を1つあげる際には、実際にその時食べる必要はなく、味わいたいもの、好きな食べ物の味を想像するだけでもオーケーです。
例えば、Aさんは職場の会議で自分の意見を同僚から完全否定され、頭にかっと血が登り、怒りが沸きあがったとします。
その時売り言葉に買い言葉で激しい口論になるよりは、一回深呼吸をして「54321」をしてみましょう。その場で行ってもよいですし、状況が許せばちょっと席を外して、廊下や違う部屋に行き実行するとよいでしょう。
廊下に出たAさんは「54321」を実行してみます。
5:見えるものを5つ挙げる
窓、窓から見える雲、エレベーター、壁にかかっている花の絵、廊下に敷かれたカーペット
4:聞こえるものを4つ挙げる
エレベーターが動く音、廊下の奥のキッチンから聞こえるカップを洗う音、廊下を歩く人の足音、ドアが閉まる音
3:タッチできるものを3つ挙げる
壁、エレベーターのボタン、窓のガラス
2:香りや匂いを嗅げるものを2つ挙げる
廊下のカーペットの掃除クリーナーの匂い、キッチンのコーヒーメーカーから漂うコーヒーの香り
1:味わえるものを1つ挙げる
コーヒーにミルクをたっぷり入れたカフェラテ
カフェラテが大好きなAさんは、カフェラテのおいしさを思い出し、休憩時間にカフェにカフェラテを買いに行こうと決めます。
ここまで来ると、自分の意見を否定した同僚へ感じた激しい怒りは、まだ存在しているにしても、少し鎮まっているでしょう。再び会議室で、同僚に向き合うとしても、批判的な意見をよく考えてみて自分の考えを改めて述べたいと返して、その場は終えることもできます。もしかすると、同僚の批判には真実が幾分含まれているかもしれません。激しい感情抜きで、冷静に同僚の言った事を考えてみるのもいいかもしれません。
激しい感情に覆われている自分から、5つの感覚をフルに味わう自分にシフトさせます。頭や心が向かう先を多様化かつ具体化させるのです。そして最後に味わえるもの、味わいたいものを1つ挙げたら、それを実際に食すためにカフェやスーパーに出かけてもよいでしょう。
激しい感情に襲われて、不本意な言動を取ったり、自分や他の人を激しく責める前に、激しい感情以外の世界を認識しましょう。