「仕事」において自分がどういう状態になれば「成功」と思えるのか。一度じっくり考えてみましょう。
昔の日本社会では多くの会社が終身雇用制度で、年功序列。歳をとれば課長、次長、部長とタイトルが上がっていきました。しかし、現代の会社では終身雇用制度も年功序列も崩れています。一度就職した会社に定年まで働き続けるケースは少なくなり、一生のうちに会社を数回変わるケースも珍しくありません。企業側も年を重ねた社員全員に役職を用意してくれるわけでもなく、年齢ではなく業績主義で昇進が決まっていくケースも増えています。
それに、今は有名な大企業だと思って就職したとしても、その企業が10年後、20年後、あるいは自分が定年になるまで、そのまま存続できるかどうかも不透明になってきています。銀行は合併・吸収を繰り返し、名前が何回も変わっています。日本が誇る世界的な電機メーカーだった東芝は、今や経営再建と経営方針の対立が著しいです。トヨタは世界的な自動車メーカーですが、電気自動車の会社から猛追を受けています。
有名どころの大企業に就職し、定年まで出世の階段を上っていくことが「成功」だという認識は、もう古いのです。
自分にとって仕事における「成功」、求めている「成功」は、どのようなものでしょうか?
仕事における「成功」の代表的なイメージには次の3つがあります。
ラダー
ひたすらラダー(はしご)を登っていく、つまり社会的地位やタイトルを上げていくことが成功だとする。
レース
他人との競争に勝つことが成功だとする。
リング
水紋のように、自分の周りの人々や環境に影響を与えていくことを成功だとする。
「ラダー」は、出世競争のイメージですね。しかし、出世のはしごを順調に登っていったとしても、永遠に登り続けられるでしょうか?出世が止まったら、「失敗者」「敗者」になってしまうのでしょうか?出世のはしごを順調に登っているぞと思っても、隣をみたら別のはしごをもっと上まで登っている同僚がいた、などということもあります。
「レース」も他人や他社との競争に一回や二回勝てたとしても、永遠に勝ち続けられるでしょうか?一人だけが「成功者」で残りの人は「敗者」になってしまうのでしょうか?
ずっと他人を負かすことだけを「成功」の定義にしていたら、自分が競争に負けた時に大きな失望感を味わって、そこで終わってしまうこと(退職や辞職、辞退など)にもなりかねません。
「ラダー」や「レース」を仕事における「成功」と定義していると、いつか「敗者」になることを自ら定めているようなものです。時には競争も必要ですが、仕事における「成功」を「ラダー」や「レース」にのみ求めないようにしましょう。
「ラダー」や「レース」ではなく、「リング」で、自分が仕事をすることで周りにどのような影響を与えていくかを考えてみましょう。自分が起こした波を周囲に波及させていくことを仕事の「成功」と定義すると、仕事に対する向き合い方、「成功」の捉え方が違ってきます。
次回は「リング」方式で、どのように自分の仕事が影響の波を起こしていくかをより深く考えていく方法を紹介しましょう。
※University of Pennsylvania Whorton のRichard Shell教授による「Achieving personal and professional success」の講義を参考にしています。