仕事を通じて習得できる一生もののメタスキルがもう一つあります。それは「事実と考えを見極める」能力です。Fact=事実とThought=自分の考えが混在している場合が多いのです。あるいは自分の考えが事実であると思い違いをしている事が多いのです。
前回「年末スペシャルプログラム2023 今の仕事を自分の糧にするワーク⑥コントロールできる事とできない事を見極める」で挙げた例について見てみましょう。
「新しい上司は若くして出世したキャリア志向の人らしい。仕事が厳しくなりそうで憂鬱」
「仕事が厳しくなりそう」は自分の考え、想像であり、事実と確認されていません。事実でない事について憂鬱になっているわけです。実際、新しい上司の下で仕事が厳しくなったらそれは「事実」になりますから、その時にどう感じるか、あるいはどう行動するかを考えればいいのです。
「先週プレゼンで失敗してしまった。チームメンバーは私に失望しているだろう。あんな失敗をしてしまって恥ずかしい」
「チームメンバーは私に失望しているだろう」は自分の考えであり、事実として確認されていません。案外、チームメンバーは失敗したあなたに同情したり、次は頑張ってほしいと応援しているかもしれません。チームメンバーが本当にあなたに失望しているかどうかは、彼らに聞いてみないとわかりませんが、「あんな失敗をして恥ずかしい」と思っているなら、チームメンバーに失敗を謝罪して、挽回策の助言を尋ねてみるといいでしょう。
もしかすると「あんな失敗をして!あなたには失望したわ」と言うメンバーがいるかもしれません。その場合「チームメンバーは私に失望した」という事が「事実」として確定されます。事実として確定されたら、どうするかをそれから考えればいいのです。謝罪してチームから脱けることを選択しなければならないかもしれませんし、あるいはセカンドチャンスを与えられて失敗を挽回する機会を持てるかもしれません。
毎日の仕事はただでさえ量が多く、忙しいのです。事実でない事をあれこれ想像して悩んだり落ち込んでいる暇はないのです。事実だけに目を向けましょう。事実に対してのみ、行動を起こすようにしましょう。
事実と考えを分ける事は、意外と難しいのです。私達の多くが事実と自分の考えや想像を取り違えて、悩んだり不安になっています。毎日の練習が大切です。仕事の場は、事実と考えを見極める絶好の訓練の場です。自分の頭に浮かんだ事が事実なのか、自分の考えなのか、確認するようにしましょう。
自分の頭の中に浮かんだ事を紙に文章で書き出してみるのも有効です。文字にすることで自分が何をどう思っているのか、はっきり目で確認できます。
「新しい上司は若くして出世したキャリア志向の人らしい。仕事が厳しくなりそうで憂鬱」
と紙に書き出して、どの部分が事実で、どの部分が自分の考えや想像なのか、色分けしてみる事もお勧めです。
「新しい上司は若くして出世したキャリア志向の人らしい。仕事が厳しくなりそうで憂鬱」
この場合ピンク部分が「事実」で、黄色部分が「自分の考え」でしたね。
このように色で分けて、事実と自分の考えを混合しないようにしてみましょう。
事実でないことを事実と思いこんだり、事実から離れて自分の想像を膨らませたりすることで、私達は自分で自分を苦しめていることがよくあります。自分がどう考えがちなのか、自分の思考の傾向を知ることも重要です。
「レジリエンスを使って自分を変えていく方法⑤ 自分が陥りやすい「思考のトラップ」を見つけましょう。」では、私達が陥りやすい考え方の癖、思考のトラップを紹介していますので参考にして下さい。
※University of Pennsylvania Whorton のRichard Shell教授による「Achieving personal and professional success」の講義を参考にしています。