前回、仕事をする上では外的報酬(Extrinsic Reward)だけでなく、内的報酬(Intrinsic Reward)を追求することが大切で、内的報酬は自分の中にスキルや経験という形で蓄積していくと説明しました。
内的報酬の中でも特に注目したいのがEarned Success(学習性成功体験)とService to others(他者への貢献)です。
『Build the Life You Want: The Art and Science of Getting Happier』(Arthur C. Brooks, Oprah Winfrey 著)でも、仕事を通じて満足感や充実感を得るためにはこの2つの内的報酬を求めることが大切だと述べられています。
「学習性成功体験」とは、昇給や昇進、名声、地位などの外的報酬とは関係なく(もちろんこれらの外的報酬が伴っても問題ないのですが)、自分で今就いている仕事において上達する、もっといい方法を見つける、自分で工夫するなど、自分で仕事内容のレベルアップを目指し、成し遂げる経験を積むことです。「私はできた」という成功体験を積んでいくことです。
その際「営業成績チームナンバー1になる」や「競争他社に勝つ」などの「他者との比較」で物事を達成するのではなく、自分の中でどう成功体験を積み上げるかにフォーカスしましょう。自分自身のための「自分目標」を設定するのです。上司や周りに告げる必要はありません。自分で、その仕事を通じて、こういう成功体験を積めるようにこうしてみようという自分だけの目標を設定するのです。
例えば前回の「経費削減のために各部署の備品の削減品目リストを作成する」という仕事を上司から命じられた場合を考えてみましょう。
この場合、考えられる内的報酬としては
- どの備品を削減したら効果的に経費節約できるか計算するために、今まで苦手だったエクセルを使うチャンスになる。
- 上司に削減する備品の品目リストを出す時に、わかりやすいようにパワーポイントを使ってまとめてみよう。プレゼン資料の作成の練習になる。
を挙げました。
この場合の自分目標としては
- 苦手だったエクセルを使いこなせるようにする
- パワーポイントで見やすいプレゼン資料を作成する
の2つを設定することができるでしょう。
そして、その自分目標を達成するためにはどうしたらよいか考えてみましょう。
- エクセルやパワーポイントの使い方の本を読む。
- エクセルやパワーポイントの使い方をまとめたYouTube動画を見る。
- わかりやすいと上司に褒められていた先輩のプレゼン資料をチェックする
- エクセルが得意な同僚に使えるワザを教えてくれるよう頼む。
このような方法を試みて、自分で設定した自分目標を達成するようにしてみましょう。
自分目標を達成することによって外的報酬とは関係なく、自分が決めた目標を達成できたという成功体験を味わうことができ、自分の中にスキルが貯まっていきます。
今の仕事をずっと続ける場合でも、あるいは続けない場合でも、自分の中で蓄積した成功体験やスキルは、どこにでも持ち運び可能です。
たとえ今の仕事が好きではない、あるいは満足できないという場合でも、自分の人生の時間を削って労働時間として費やさないといけないわけですから、自分のためになる報酬を仕事を通じて得るようにしていきましょう。
次回はもう一つの内的報酬、「他者への貢献」について説明します。
※University of Pennsylvania Whorton のRichard Shell教授による「Achieving personal and professional success」の講義を参考にしています。