前回、内的報酬の中でも特に注目したいのがEarned Success(学習性成功体験)とService to others(他者への貢献)であると説明しました。
『Build the Life You Want: The Art and Science of Getting Happier』(Arthur C. Brooks, Oprah Winfrey 著)でも、仕事を通じて満足感や充実感を得るためにはこの2つの内的報酬を求めることが大切だと述べられています。
仕事は自分の生活のため、自分の出世のため、自分のお給料のため。それでも問題はありませんが、仕事に充実感を感じたり、仕事を通じて幸福感を味わおうとするなら、もう一歩進んで、「他者への貢献」という内的報酬を見つけてみましょう。
大げさな事である必要はありません。
医者や看護師、ボランティア活動団体など、「他者への貢献」が仕事そのものになっている職種に就かないといけないわけではありません。
今の仕事の中で、自分以外の存在に貢献できる部分を探してみましょう。どうしても見当たらないなら、自分で貢献できる部分を作り出してみましょう。
前回の「経費削減のために各部署の備品の削減品目リストを作成する」という仕事を上司から命じられた場合を考えてみましょう。この仕事の「他者への貢献」は「経費削減に貢献する」ことでしょう。備品の削減品目リストの作成は一見面白みのない仕事に思えるかもしれませんが、「経費を削減して会社の経営状態向上に貢献できる」仕事です。
「お給料のために働いている」「生活のために仕方なく働いている」場合だとしても、行っている仕事は、他者へきちんと貢献しているのです。
自分が行っている仕事がどのように他者に貢献しているのか考えてみましょう。まったく何にも誰にも貢献していない仕事というものは存在していないはずです。
自分の仕事がどのように他者に貢献しているのかを理解する上で役に立つのは、会社の掲げている企業理念やミッションです。日本の多くの会社は、経営の指針の中に「地域社会へ貢献する」「人類の技術革新に貢献する」「物流の効率化に貢献する」など、どのように他者へ貢献するかが含まれているはずです。
例えば、日立の場合、企業理念として「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を掲げています。イノベーションによって人々に貢献できる製品を作っていくという「他者への貢献」が含まれています。
トヨタの場合は、グローバルビジョンとして「人々を安全・安心に運び、心までも動かす。そして、世界中の生活を、社会を、豊かにしていく。それが、未来のモビリティ社会をリードする、私たちの想いです」と掲げています。安全・安心を追求し、モビリティ社会をリードするという点が「他者への貢献」です。
このような企業理念やビジョンを掲げている企業に勤めている方は、その企業の「他者への貢献」の活動に参加しているのです。
あるいは、自分で「他者への貢献」の目標を作ることもお勧めです。
例えば、営業職についている人が「他者への貢献」目標として、「今日一日でお客様10人に笑顔になってもらう」ことを掲げることができます。
あるいは経理部で働いている人が、「他者への貢献」目標として、「今日オフィスで会う人全員に笑顔で気持ちよく挨拶しよう」と決めて、気持ちよい挨拶に相手を和ませることもできます。
自分の仕事を通じて、どのように他者に貢献できるかを考え、実行していくことで、仕事は単なる仕事以上の意味を自分の中に生み出していきます。それが、「満足感」「達成感」「やりがい」に繋がっていきます。
※University of Pennsylvania Whorton のRichard Shell教授による「Achieving personal and professional success」の講義を参考にしています。