オフィス・ライトハウス
ポジティブ心理学実践ワーク
仕事に前向きになる方法

交渉をうまく進める心理スキル➂  ロール・リバーサル

ロール・リバーサル(Role Reversal)とは、「逆の立場」のことで、相手の立場、視点から物事を見てみることです。

話し合いや交渉では、自分の意見を強調して、自分の立場を主張することが一般的ですが、うまく話し合いを進めるために、相手の視点から物事を見てみることが役立ちます。
「相手だったらどう思うだろう?」「相手の立場であればどう受け取るだろう?」「相手は何を求めているのだろう?」と、相手の側にたって想像してみるのです。
そこから、解決策や交渉をスムーズに成立させるポイントが見つかることも多いのです。

例えば、鈴木さんは自社の新商品の会計ソフトウェアを、A社の経理部の高田さんに売り込もうとしているとします。

A社は経費精算をまだ紙ベースで行っており、会計システムを導入していません。鈴木さんは高田さんに自社の会計ソフトウェアの優れた点や使いやすさ、類似商品に比べて価格が安いことなど、メリットを並べてアピールしていますが、高田さんは検討中と答えるのみで、決断してくれません。不明な点があるか聞いても、特にないと答えるのみです。

そこで鈴木さんは「ロール・リバーサル」で、高田さんの立場を考えてみます。高田さんは経理部で紙ベースの経費精算の大変さをよくわかっています。業務効率が悪いので、ソフトウェアを導入してシステム化したいと望んでいます。A社の業界でも、会計ソフトウェアを導入している会社が多いこともわかっています。しかし、高田さんは、それらをあまりデジタルに詳しくない上司に説明して、説得することが億劫だと思っていることがわかりました。また新しいソフトウェアの購入にはお金がかかりますから、予算を獲得しないといけません。それを上司に申し出ることも、内気な高田さんにはハードルが高いようです。
つまり、高田さんは会計ソフトウェアの必要性はわかっているし、導入したいと自分でも考えているけれど、上司を説得する決心がつかない、勇気が出ないということが障害になっています。高田さんは日常会話をする分にはよく話しますが、人を説得したり、自分の意見を声高に主張することは苦手なのです。

そこで、鈴木さんは自社の会計ソフトウェアのメリットを強調する前に、なぜ紙ベースをやめて、会計ソフトウェアを導入した方がよいかという基本的なメリットをリストにまとめて、それをメールで高田さんに送りました。高田さんが上司に説明する時の資料にしてもらうためです。また、会計ソフトウェアを導入することで、多くの社員の時間節約になり、残業時間が減り、ひいては残業時間が減ることを、サンプルを用いて計算して高田さんに送りました。内気な高田さんが上司を口頭で説得することは難しいと考え、資料にすべて書いて、上司に渡して読んでもらえれば会計ソフトウェア導入のメリットと、中期的にみれば経費削減と業務効率化に繋がることを上司が理解できるよう、説得資料をまとめて高田さんに渡しました。

高田さんは、それを上司に提出し、会計ソフトウェアを導入する必要があることを理解してくれました。

鈴木さんが自社商品のよさばかり強調して高田さんを説得しようとしていたら、こうはいかなかったかもしれません。高田さんの立場から物事を考えてみた時、高田さんの視点から物事を見てみた時、高田さんが進めやすい解決策が浮かんできたわけです。

相手との交渉事は、自分の立場や意見の主張ばかりではなく、相手の立場や役割、キャラクターなど、相手になったつもりで考え、ロール・リバーサルな視点を導入してみましょう。

※University of Michigan, George Siedel教授の「Successful negotiation」を参考にしています。

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