イギリスのブリストル大学の教授ブルース・フッド氏(Bruce Hood)が出版した『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』には、人はどうしたら幸せだと感じられるか?について様々なアドバイスが書かれています。イギリス版ウェル・ビーイングのヒントと言えるでしょう。ポジティブ心理学や発達心理学と重なる部分も多いのです。
フッド氏の本の中から、私達の毎日の生活の中で実践しやすい「幸せだと感じる方法」を紹介していきましょう。
私達が感じるネガティブな感情の中で一番激しく、リピートされがちな感情といえば「怒り」だと思います。
「怒り」を感じた時には「ファイトあるいはフライト衝動」(fight or flight response)という人間の原始的な脳の反応が起きますので、怒りの対象に対して闘いを挑むか、逃避するかの2つに一つの行動しかないと思い込んでしまいがちです。
「怒り」の感情を感じたら、この「ファイトあるいはフライト衝動」に陥らないよう、「ボックス・ブリージング」(box breathing)を実践するようフッド氏はこの本の中で勧めています。
「ボックス・ブリージング」とはアメリカの海軍で使われている呼吸法だということですが、直訳すれば「箱型呼吸」です。どこでも、誰でも、いつでも、すぐに実践できる点が特徴です。方法は以下の通りです。
- 怒りを感じたら、まず、目を閉じます。
- 頭の中で、四角をイメージします。
- 左から右へ横に下の線をなぞるようにイメージして、1,2,3,4と息を吸います。
- 下から上への線をなぞるようにイメージして、1,2,3,4と息を止めます。
- 右から左へ上の線をなぞるようにイメージして、1,2,3,4と息を吐きます。
- 上から下への線をなぞるようにイメージして、1,2,3,4と息を止めます。
- このサイクルを数回繰り返します。
呼吸するたびに自分の胸が息を吸うときは上がり、吐くときは落ちる動きを意識しましょう。
自分で意識的に呼吸をコントロールすることで、副交感神経が活発になり「ファイトあるいはフライト衝動」に対抗していきます。
四角のイメージをなぞりながら、呼吸を自分でコントロールしていくことで、怒りの感情は鎮まり、衝動的な言動に出ることを避けられます。
一方、怒りの対象は消えたわけではないので、対象に対してどうするかという対策を考える必要がありますが、「ファイトあるいはフライト衝動」のままに怒りの対象に反応すると、激しい言葉遣いになったり、自分や相手を傷つけたり、本意ではない言動で周囲に誤解を与えたりしがちです。まずは「ボックス・ブリージング」で原始の怒りを沈めてから、怒りの対象への対処法を理性的に考えていきましょう。
この「ボックス・ブリージング」は、怒りだけでなく、強い不安感や心配に襲われた時にも効果的です。強いネガティブな感情を「ボックス・ブリージング」で鎮静化させ「ファイトあるいはフライト衝動」に走らないようにしてから、対象への対抗策を考えていきましょう。
※Bruce Hood著『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』を参考にしています。