イギリスのブリストル大学の教授ブルース・フッド氏(Bruce Hood)が出版した『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』には、人はどうしたら幸せだと感じられるか?について様々なアドバイスが書かれています。イギリス版ウェル・ビーイングのヒントと言えるでしょう。ポジティブ心理学や発達心理学と重なる部分も多いのです。
フッド氏の本の中から、私達の毎日の生活の中で実践しやすい「幸せだと感じる方法」を紹介していきましょう。
心理学の実験で多く行われているのが、5ドルなどの一定のお金を人に与えて、それを自分のために使う場合と、他人のために使う場合と、どちらかその人の幸福感が高まるかという実験です。自分のために使った方が自分の欲しい物を手に入れて幸福感が高まりそうな気がするのですが、実験結果は他人のためにそのお金を使った場合の方が幸福感が高まるのです。同様の実験が様々な国、様々なシチュエーションで実行されましたが、結果はいつも他人のためにお金を使う場合の方が、自分のためにお金を使う場合よりも、幸福度が高くなりました。
これはワーム・グロー・オブ・ギビング効果(warm glow of giving effect)と呼ばれる現象で、人間は他人に感謝されたり、他人のためによい事をしたと感じると、気分がよくなり、幸福感を感じるのです。
これは実は科学的にも確認されています。他人に親切にするという寛容な行動は、耳の後ろの脳の奥深くにある線条体(気分がよいと感じる報酬システムがある)と、頭の後ろのほうにある側頭頭頂接合部(他人を認識する機能がある)を刺激し、この2つの機能間のやり取りを増加させます。それによって、幸福感の自覚が生まれます。
つまり、他人に親切にしている時、自分自身にも幸福感を増加させて親切にしているわけです。
他人へ親切にする行動とは、大きな行動である必要はありません。スターバックスでコーヒーを受け取った時に「ありがとう」と店員にいう。後から乗ってくる人のためにエレベーターのドアを押さえてあげる。ちょっとした寄付をする。職場の同僚が重い荷物を運んでいたので手伝ってあげる。何でもよいのです。
この他人に親切にする行動は、対象が本当に他人(家族や親しい知人ではない)、見ず知らずの人である方が効果が高いことがわかっています。また、この親切な行動に見返りを求めることはしないでおきましょう。無償の親切こそ、自分の幸福感を高めてくれます。
自分の幸福感を高めたいなら、他人に小さな親切を実践してみましょう。
※Bruce Hood著『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』を参考にしています。