オフィス・ライトハウス
ポジティブ心理学実践ワーク
ポジティブ心理学

イギリス版幸せだと感じる方法⑬ コントロール感覚の大切さ

イギリスのブリストル大学の教授ブルース・フッド氏(Bruce Hood)が出版した『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』には、人はどうしたら幸せだと感じられるか?について様々なアドバイスが書かれています。イギリス版ウェル・ビーイングのヒントと言えるでしょう。ポジティブ心理学や発達心理学と重なる部分も多いのです。フッド氏の本の中から、私達の毎日の生活の中で実践しやすい「幸せだと感じる方法」を紹介していきましょう。

今回はコントロール感を取り戻すことの大切さについてです。

人間は先のことがわからないと不安になります。自分の人生がどうなるのか予測できないことは人間の心理を不安定にします。その上、自分の人生を自分でコントロールできない、他人や周囲の要素によって支配されていると感じると、ますます心理状態は不安定になります。

どんな人も先の事が100パーセント見通せるということはありませんから、先行きがわからないことはどうしようもないですが、その先行きがわからない未来を、つまりこれから先の自分の人生を、自分でコントロールできる感覚を持つと不安感は薄らぎます。自分の人生を自分でコントロールしているという感覚は、不透明な先行きをうまく乗り越えていくために大変重要な感覚なのです。

困難な状況に直面した時、コントロールの感覚がないと、余計ストレスを大きく感じ、どうしようもないという悲観的な気持ちに落ち込んでいきます。

一方、コントロール感を持っている人は、問題に直面しても、そこから抜け出す、乗り越える気力と解決策を見出していきます。

では、自分で自分の人生をコントロールできるという感覚は、どのように養われるのでしょうか?心理学者達は楽観性を持つ事が重要だと考えています。「どうにかできる」と考えることができる能力です。楽観性を持つということは、たとえ困難な状況に遭っても、そこにじっととどまらず何らかの行動を起こしてみる、先のことを考えてみる、過去や現在の問題ばかり反芻するようなことがないことを意味します。

一方、人間の中には悲観性を持って物事を考える人もいます。「どうにもできない」「もうだめだ」「どうせうまくいかない」などと考え、無気力、無希望になる心理状態です。当然、自分の人生を自分でコントロールできるとは考えません。自分には何もできないと思い込みます。

この楽観性を持つ人と悲観性を持つ人の違いはどこから来るのでしょうか?心理学者達は当初遺伝による影響ではないかと考え調査しました。その結果は、楽観性については約24パーセントが遺伝によるもの、悲観性については29%が遺伝によるというものでした。遺伝による影響がゼロではありませんが、3分の1にも満たないのです。楽観性を持つか、悲観性を持つかの違いは、遺伝よりも、その人の環境による要素が大きかったのです。特に子供時代に受ける周囲からの影響が大きいことがわかりました。子供に対する両親の考え方、生き方が、子供の楽観性を育てるためには大変重要なのです。

そうはいっても、その親も楽観性を持てないなど、親自身が問題を抱えている事も多く、また、子供の頃の環境の大切さを今知ってもとっくに成人している人達にとっては遅きに失すると思うでしょう。

しかし、楽観性は後から学ぶことができるのです。この姿勢や心理は、後から学習して身に付けることができると、ポジティブ心理学の第一人者、マーティン・セリグマン博士は提唱し、その方法を紹介しています。

その方法とは、まず、自分がどのような思考のパターンを持っているか見極めることです。

人間が陥りやすい、悲観性に繋がりやすい思考のパターンが複数あります。「レジリエンスを使って自分を変えていく方法⑤ 自分が陥りやすい「思考のトラップ」を見つけましょう。」でその思考パターンを紹介していますので参考にしてみて下さい。

レジリエンスを使って自分を変えていく方法⑤ 自分が陥りやすい「思考のトラップ」を見つけましょう。レジリエンスを使って自分を変えていく方法...

フッド氏は特に悲観性を持つ人は、次の思考のトラップに陥っていることが多いと指摘しています。

  • Me trap ミー・トラップ:全部自分が悪いと思い込む。罪悪感を感じ、問題を全部自分のせいだと責める。
  • Catastrophizing カタストロファイジング 深刻化する:悩みや問題をずっと考え続けて反芻する。非現実的な最悪の事態を想像してパニックになる。自分の想像が、現実を超えて、心配を増幅させる。針小棒大の考え方。
  • Overgeneralizing 過度な一般化:特定のルールを、すべての出来事にあてはめて考える。一つ悪い事が起きれば、他も全部悪い結果になると思いこむ。

自分がどのような思考のトラップに陥っているかすぐわかればよいのですが、あまりにも日常化して自分で気づかない場合も多いのです。

それで、一度自分の考えるパターンを整理して、自分がどのような思考のトラップを持っているのか認識してみましょう。

セリグマン博士が提唱しているその方法について、次回説明したいと思います。

※Bruce Hood著『The Science of Happiness: Seven Lessons for Living Well 』を参考にしています。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA