人間、様々なネガティブな感情を抱くものです。人間の脳は将来のリスクを察知し、予想して対処するようにできていますから、ネガティブな情報を集めやすいのです。人間が生物として生きていくためには役立つ機能ですが、ネガティブな感情を抱きすぎるのも私たちの生活に悪影響です。
ポジティブ心理学の観点から、代表的なネガティブ感情12種類に対処する方法を身に着けておきましょう。今回は他の人から押し付けられる作業や頼みによる「プレッシャー」です。
職場の上司から仕事を依頼されたけれど、もう既にやらなけばいけない事が一杯でとても引き受けられない。しかし、上司の命令だから、やらなければならない。徹夜仕事になってしまう。あるいは家族との時間を犠牲にしなくてはならない。
上司からはどんどん仕事の依頼が来るし、プレッシャーを感じる。しかし、断れば評価が下がるだろうから、断れない。
このような状況は会社勤めをしている人なら、経験したことがあるのではないでしょうか?
職場の上司だけでなく、顧客から同じように無理な願いをされることもあるでしょう。
なかなかはっきりNOと言えず、仕事を引き受けてしまったけれど、期日までに終わらない。締め切りを守ったとしてもミスだらけの雑な仕事になったり、プライベートはすべて犠牲にすることになる。
プレッシャーがあまりにも大きくなったり、常態化すると、職場に行くのが憂鬱になったり、上司が嫌で仕方がなくなり人間関係が上手くいかなくなります。
このようなプレッシャーを回避するためには、NOと言うスキルを身に着けましょう。
「忙しいから引き受けられません」
「今時間がないです」
「大変な量の作業になるので無理です」
このようにはっきり断ってしまえば、簡単な話ですが、それでは上司との関係もダメージを受けるでしょうし、あなたの有能さや勤勉さをわかってもらえないかもしれません。
NOという場合には、次の4つの段階を経て話してみましょう。
- Speaker’s point view(スピーカーズ・ポイントビュー):仕事を依頼してきた人の見解に基づく
- My point view(マイ・ポイントビュー):自分の見解に基づく
- Alternative solution(オルタナティブ・ソリューション):代替案を示す
- Agreement(アグリーメント):合意を確認する
この4つのプロセスを経て、NOと言ってみましょう。
例えば、既に今週末までの急ぎの仕事を抱えているのに、上司がすぐに商品製造コスト見積もりを出してくれと言ってきた場合を考えてみましょう。
- Speaker’s point view(スピーカーズ・ポイントビュー)→「商品製造コストを急いで出す必要があるのですね?どれくらい急ぎですか?具体的な締め切りはありますか?」
「商品製造コストが必要なのは、会議で使うためですか?どこまで詳細な見積もりが必要ですか?」 - My point view(マイ・ポイントビュー)→「私は既に今週末までに終わらせないといけない仕事AとBを2つ抱えています。こちらも重要な仕事だと思いますので、締め切りを守りたいと思います」
「この仕事と、商品製造コスト見積もりでは、どちらが重要度が高いでしょうか?」
「〇〇課長にとっては、どちらの仕事を先に済ませた方がいいですか?」 - Alternative solution(オルタナティブ・ソリューション)→
「商品製造コスト見積もりの方が急ぎで重要ということでしたら、それを先に終わらせます。金曜日の昼12時までに提出ということでいいでしょうか?」
「商品製造コスト見積もりを先に仕上げるので、今抱えていた仕事のうち一つの締め切りを来週末までに延期しても問題ないでしょうか?」 - Agreement(アグリーメント)→
「それでは商品製造コスト見積もりを金曜日12時までに提出します。今抱えている仕事のうちAは予定通り今週金曜日17時までに終わらせます。Bの方は来週金曜日17時の締め切りに延ばすということでよろしいでしょうか?」
「よろしければ、現在〇〇課長にとって最重要問題である、商品製造コスト見積もりにすぐ取り掛かります」
このように、上司の視点から見た見解→自分の視点から見た見解→妥協点を探し、代替案を提案→合意したことをなるべく具体的に確認する、というプロセスを取って話すと、NOと言うだけではなく、上司もあなたも満足できる仕事の進め方を可能にします。
ただNOというだけでなく、建設的な議論の末解決案を提案するあなたの能力が、上司にとっても頼もしく思えるでしょう。
あなたが感じていたプレッシャーも、上司とうまく交渉して、自分が納得できる作業工程にできたことで、薄らいでいくでしょう。
何でもかんでも仕事を引き受けてしまってプレッシャーでストレスを感じる。
依頼された仕事を断って、消極的、やる気がないとう評価を受けてしまう。
そのような事態を避け、建設的なNOの議論をして、プレッシャーをなくしていくために、この4段階プロセスのNOを使ってみましょう。