ストレスは生きている限り無くなりません。
ストレスは私達が生きていく上で払わないといけない代金とも言えます。
重要なのは、ストレスをいかに管理していくか、ストレスをポジティブなチャレンジに変えていくための方法を知っておくことなのです。
心理学博士のJenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』(ストレス・リセット:あなたの体と心を数分で穏やかにする方法)を参考に、すぐにできるストレスの緩和方法を紹介していきましょう。
今回は反芻思考です。ルミネ―ション(rumination)といって、同じことを繰り返しずっと考えることです。
人間はストレスを感じた体験を頭の中で再現したり、ストレスを感じそうな状況を想像したりする能力が備わっています。これは人間がリスクを察知し、備えて命を守るために重要な能力でありますが、現代の社会で生存を脅かされるようなリスクはそう多くは遭遇しないので、この能力が暴走してしまうことがあります。
過去のストレスを感じた局面や、将来ストレスを感じそうな場面を想像することを頭の中で幾度も繰り返して、その事から離れられなくなってしまう。これが反芻思考、ルミネ―ションです。反芻思考そのものが、ストレスを生み出していきます。そして、あなた自身だけでなく、周囲の人にもストレスを与える傾向があります。あなたの反芻思考が周りの人にも伝染していく危険があります。
反芻思考は、あなたや周りの人間に何のメリットもたらしません。むしろ、更に不安を増大させ、先送り癖を強化することになります。そして、それが更にストレスを増大させるという負のサイクルに陥ります。また、あなたのことを心配する周りの人達も遠ざけてしまいます。
ぐるぐる考え過ぎても何もいいことはない。その事をまず認識しましょう。
そして、反芻思考をストップする方法をトライしてみましょう。
自分のゴールをはっきりさせる
あれこれ考え始めたら、自分が何を目指そうとしているのか、ゴール、目標をはっきりさせましょう。そしてその目標を達成するために、具体的に何をしたらよいのか、小さな目標を設定していきましょう。
例えば「老後の生活に必要なお金を稼げるだろうか?」と心配し始めたとします。老後二千万円問題とか、将来の年金が減額されるのではないかとか、ぐるぐる不安な事を考えて止まらなくなったとします。
そうしたら、まず、目標をはっきりさせましょう。目標は「老後のお金について不安になること」ではなくて、「老後のお金が足りなくならないようにすること」です。
次に「老後のお金が足りなくならないようにすること」のために自分ができる小さな目標を設定していきます。
- まず毎月の生活費がいくらかかるのかチェックする
- 将来もらえる年金の受給額をチェックする
- 退職金はいくらもらえるのかチェックする
- 年間で貯める貯金額を設定する
- 減らせる費用を探す(食費、遊行費など)
- 不必要な生命保険契約がないか確認する
などです。
目標達成のために自分ができる小さな目標を作って、それを一つ、一つ、実行していきましょう。
実行しているうちに、反芻思考は影をひそめると思います。
リスク・ファクターを確定する
イギリスのエクセター大学の心理学教授であるエドワード・ワトキンス博士は、反芻思考に特化した認知行動療法を研究していますが、ワトキンス博士は「反芻思考に陥らせているものは何かを特定する」ことが重要であると主張しています。
反芻思考に陥る場面、特定のテーマ、対人関係、時間帯、などをノートなどに記録しておきます。そこに何らかのパターンがないか、チェックしてみます。
- 上司のAさんと話すといつも「自分は能力がない」という反芻思考に陥る。
- 夜寝る時になると「仕事が予定通りに終わらない」という不安感に襲われる。
- 子供の教育について考えると、そのための十分な資金がないのではないかと心配しはじめる。
などのパターンです。
記録を見て、自分がどのような場面で反芻思考に陥りやすいかを認識したら、その場面を避けられるようなら、なるべく避けます。しかし、上司と話す、子供の教育について考えるなどは、避けようがない場面です。その場合、反芻思考が出そうになったら、違う行動を取るようにしてみます。
例えば
- 上司のAさんと話したら、反芻思考が出る前に、温かい飲み物を飲む。
- 子供の教育用資金について心配し始めたら、近所をウォーキングにいく。
などです。
反芻思考が始まりそうな場面をあらかじめ特定しておいて、その場面であえて、反芻思考とは異なる行動を取ってみます。
セルフ・ディスタンシング
Self-distancing.自分から距離を取ることです。
反芻思考に囚われている時は、近視眼的かつ狭い視野でしか物事を見れていません。
自分が反芻思考をやり始めたと思ったら、自分に「I」(わたし)ではなく「You」(あなた)で語り掛けましょう。自分に対し第三者的立場を取るのです。
「私はとんでもないミスをした」
ではなく
「あなたはとんでもないミスをした」
と言い換えます。
「あなた」と第三者的立場で自分に語りかけることで、悩んでいる問題から少し距離を取って考えることができます。
「あなた」ではなく、自分の名前を呼ぶというのも、第三者的立場を導入しやすくなります。
メンタル・タイム・トラベル
反芻思考が始まった時、その悩みが、未来の自分はどう感じるのか想像してみます。
1週間後、1カ月後、1年後、その悩みはその時の自分にとってどのようなインパクトを与えているでしょうか?もしかすると、未来では何の意味もなくなる悩みかもしれません。
例えば、同僚と口論になってしまったことを悔やみ、くよくよ悩んでいるとします。
1週間後くらいは、まだその事で悩んでいるかもしれませんが、1年後は恐らく気にしてもいない、忘れてしまっているのではないでしょうか。
このように、将来の自分にとって、現在ぐるぐる考えている悩みは実はどうってことないという認識を持つことで、反芻思考から抜け出せます。
※Jenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』を参考にしています。