心理学博士のJenny Taitz氏はその著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』(ストレス・リセット:あなたの体と心を数分で穏やかにする方法)の中で、ストレスにすぐ対処するストレス・リセットの方法を紹介していますが、加えて、少し時間をかけて繰り返し練習することでストレス耐性を強めるストレス・バッファーの構築する方法も紹介しています。
ストレス・リセットのように即効性はないかもしれませんが、繰り返すことでストレスに対して強くなる、感じるストレスを少なくする方法です。
ストレス・バッファーの2つ目として紹介したいのは、「メンタル・リハーサル」です。
大事なプレゼンが今週末にある。
自分の将来を決めるような重要な試験が明日ある。
このようなビッグ・イベントが待っていると思うと、緊張し、うまくいくかどうか心配になり、失敗するのではないかと不安になります。事前に心配しすぎると、その心配で過度なストレスに押しつぶされ、実際に失敗してしまうケースもあります。
そうならないよう、メンタル・リハーサルをしてみましょう。
事前に、自分がそのイベントを経験する様子を心の中でイメージして、もし問題になりそうなことが思い浮かんだら、あらかじめ対処策を打っておきます。
例えば、大事なプレゼンが今週末にある場合を考えてみましょう。
Aさんは大勢の大事な顧客を前にして、うまく話せるかどうか、不安になっています。途中で話すことを間違えたり、忘れたりしたらどうしよう。プレゼン会場に遅刻したらどうしよう。さまざまな心配が沸き起こってきて、とてもストレスを感じています。自分にはこんな大役は務まらないのではないかと、自信も喪失しています。
そんな時にメンタル・リハーサルしてみます。
プレゼンの日、朝起きてからの自分の行動を想像してみます。
- 朝起きて、朝食を食べて、身支度を整えて、家を出る。
- 寝坊しないようにしないといけない。→目覚まし時計を2つかけるようにしよう。
- 遅刻しないようにしなくてはいけない。→プレゼンに来ていく服を前日にセットしておこう。シミや汚れがないか、確認しておこう。靴を磨いておこう。
- この時に忘れ物をするかもしれない。→前日の夜に必要な物をチェックし、カバンに全部入れておこう。持っていくべき物をすべて紙に書き出しておこう。
- 地下鉄で会場に向かう。→余裕を持って会場に着くよう、予定時刻よりも10分早く着こう。そのための経路をチェックしておこう。
- 会場で、プレゼンチームのメンバーと会う。
- スクリーンに映し出す資料に問題ないかどうか最終確認する。→資料にミスがないか、先輩にもう一度事前に見てもらおう。
- パソコンやプロジェクターの動作に問題がないか確認する。→万が一問題が出た時に備えてITスタッフにも同席してもらうようお願いしておこう。
- 壇上に立った時、しかめっ面にならないよう、笑顔を浮かべるようにしよう。→緊張してそうできないかもしれない。会場で顔なじみの同僚の顔を見たら安心すると思う。緊張したら同僚の方を見よう。
- 話し始めたら緊張して、話す内容を忘れてしまうかもしれない。→話すポイントを小さなカードに書き出して持っていこう。
- 出席者の興味を引けないかもしれない。→とにかく正確に、真剣に話すことが第一である。受けを狙わなくてもいい。ゆっくり、聞き取りやすい口調で話すことを第一に心がける。
- プレゼンの後質問が出て、答えられないかもしれない。→全部の質問をその場で自分が答えなくてもいい。わからない質問には後で調べて解答すればいい。あるいは先輩に質問コーナーの時にサポートしてくれるようお願いしてみよう。
このように、プレゼンの日の様子を、想像してみるのです。
想像するうちに、問題や障害になりそうなことも浮かんできます。その場合は、あらかじめ対応策を取っておくのです。
メンタル・リハーサルを行うことで、事前に失敗に繋がりそうなリスクを洗い出すこともできるのです。
問題になりそうな事態に事前に手を打ってあると思えると、ストレスも緩和されます。「自分はいろいろな事態に対して十分備えてある」と思えることで、自信がつき、自分の実力をフルに発揮できるようになります。
そして、メンタル・リハーサルで思い描いたとおりに、実際のプレゼンが進むと、今後のビッグ・イベントも同様にクリアーしていけばよいと自己効力感が出ます。
心配になるようなビッグ・イベントがある場合は、このメンタル・リハーサルを実践してみましょう。
※Jenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』を参考にしています。