心理学博士のJenny Taitz氏はその著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』(ストレス・リセット:あなたの体と心を数分で穏やかにする方法)の中で、ストレスにすぐ対処するストレス・リセットの方法を紹介していますが、加えて、少し時間をかけて繰り返し練習することでストレス耐性を強めるストレス・バッファーを構築する方法も紹介しています。
ストレス・バッファーの4つ目として紹介したいのは、Expressive writing、エクスプレッシブ・ライティングです。日本語では、感情表記、感情書き出し法などと呼ばれています。
ストレスを感じて感情が荒れたり、頭の中がぐるぐる回っているように感じたら、エクスプレッシブ・ライティングを試してみましょう。
頭や心を支配している悩みや考えや感情を紙に書き出すことで、それらのネガティブな感情から距離を取ることができます。また、もやもやと漠然とした不安や悩みが、文字にすることで明確になってきます。
エクスプレッシブ・ライティングの方法は簡単です。
- まず一人で静かになれる場所にいきます。
- ペンと紙を机の前に置きます。
- 15分のタイマーをセットします。
- 書き出すテーマを一つ選ぶ。
- そのテーマについて、自分の考えや感情を書き出していく。
- 同じことを4日間連続して行う。
選ぶテーマとしては、以下のことから一つ選びます
- 今あなたが考えていること
- 今、悩んでいること。
- 夢見ていること
- あなたの生活に悪影響を与えていること。
- ずっと避け続けていること。
たくさん書いてもよいのですが、まず15分間で書きますので、一つだけ選んできましょう。
選んだテーマについて、あなたが考えていること、感じていることを正直に書き出していくことで、隠れていた感情や、自分が本当に苦しんでいる原因、自分が本当に望んでいるものが、浮かび上がってきます。
この際、過去に起こったことは過去形で書くようにして下さい。
書いているうちに怒りや悲しみなどの強い感情がこみ上げてきた時は、15分経たなくても書くのは中止して、翌日改めて書いてみましょう。
エクスプレッシブ・ライティングは、James Pennebaker博士によって生み出されたストレス対処の一つの手法です。自分の本当の感情に気づく、自分の心の奥に埋まっている考えに向き合う、自分を捕えている過去のネガティブな出来事を浮かびあがらせて、気づき、向き合うことが可能になります。
また、書くことで、内に秘められた苦しみや悩みが表に出され、気分転換にもなりますし、書き出した文を読むことで、解決策や対処法が見つけられる可能性もあります。
あるいは書き出したものを読んだら、大したことでないと悟る場合もあります。
もやもやと形のない感情や苦しみを、書き出すことで、文字という形で視覚化することが重要なのです。目に見えるものに対しては、論理的に向き合える可能性が高くなるのです。
エクスプレッシブ・ライティングをしていると、時々苦しいと感じる時もあるかもしれませんが、過去や自分を悩ませている問題をずっと引きずって抱えているよりは、はっきりさせて、向き合っていくことで、これからの人生に、過去の出来事が悪影響を及ぼすことを防ぐことができます。
一方、エクスプレッシブ・ライティングの過程で、激しい過去の苦しみがぶりかえすPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を自覚するケースもあります。PTSDではないかと思う場合には、専門医による適切な治療が必要です。最近は心療内科の専門医や心理カウンセラーがいる病院も増えてきていますので、あまりにも激しい苦しみや恐れを繰り返す過去の出来事があった場合には、専門医への相談をお勧めします。
※Jenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』を参考にしています。