心理学博士のJenny Taitz氏はその著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』(ストレス・リセット:あなたの体と心を数分で穏やかにする方法)の中で、ストレスにすぐ対処するストレス・リセットの方法を紹介していますが、加えて、少し時間をかけて繰り返し練習することでストレス耐性を強めるストレス・バッファーの構築する方法も紹介しています。
ストレス・バッファーの10つ目として紹介したいのは「マインドフル・イーティング」、マインドフルに食べることです。
ストレスを感じて、食欲を失くしたり、逆に食べすぎたりすることがあります。あるいは、食事中もスマホを見て、メールを返して、あるいは仕事をしたり、テレビを見て、食べることに意識を向けない時があります。こうなると「食べた」という満足感がないので、食べ続けたり、余分な量を食べてしまいがちです。
食べることを疎かにしていると、ストレスを感じるたびに、食べなくなったり、あるいは過食したりと、エモーショナル・イーティングと呼ばれる行動に陥ることになります。
エモーショナル・イーティングとは、感情のはけ口として食べることです。いやな気持ちやいらいらした気持ちをぶつけるようにたくさん食べたり、あるいは食べなくなったりすることです。このエモーショナル・イーティングを癖にしてしまうと、過食症や拒食症などの深刻な事態にも繋がりかねません。そこまでの極端な症状にいかないにしても、自分に対して自己嫌悪の気持ちを抱いたり、自分には価値がない、自分をコントロールできないだめな人間だと、自己肯定感を否定する気持ちに押しつぶされていきます。それが更にストレスを増大し、また過食や少食を加速させる、すると更に自己嫌悪感が強くなる、という悪循環に陥ってしまいます。
イライラしてちょっとやけ食いしちゃった・・・ということがたまにあるくらいならよいのですが、ストレスを感じるたびに、過食や少食をしているならば、それはエモーショナル・イーティングです。状態が深刻化する前に、治していきましょう。
そのために、マインドフルに食べる、つまり、食べることに集中して食べていきましょう。
その練習として、いちごやりんごなどフルーツを使ってみて下さい。
まず、ながら食いはダメです。テレビやスマホや音楽はオフにして下さい。
そして、一粒のいちご、あるいは一切れのりんご、一個のみかんなど、フルーツを一つ、お皿に置いて目の前に置きます。
例として、一粒のいちごを食べるとします。
お皿の上に置いたいちごを、食べる前によく観察します。手に取ってもよいでしょう。色や形、あるいは香りをかいで、いちごをよく観察します。
その後、いちごを一粒かじります。その味やみずみずしさをフルに味わいます。
そして、もう一齧りします。最初と二回目では、味やみずみずしさに違いがあるでしょうか?
そして、もう一齧りします。味に違いがあるでしょうか?
いちごをかじるたびに、そのいちごの味、香り、感触を感じることに集中します。
それがマインドフル・イーティングです。
自分の神経、感覚を、目の前にある食べ物を味わいつくすことに全集中するのです。
一粒のいちごでも、かじるたびに味に違いがあるかもしれません。いちごの味を改めて認識するかもしれません。
すべての食事において、食べ物一つ一つに、このいちごに対して取ったような行動はとれないと思いますが、食事をする時に、一粒のいちごに集中して味わったように、一口、一口、あるいは一個、一個のおかず、あるいは一皿、一皿の料理を、神経を集中させて味わいましょう。
そういう食べ方をすると、食事時間にはある程度時間がかかります。人間が食べ始めてから満腹を感じるまでには約20分かかりますので、ある程度時間をかけて食事をした方が、食べすぎを防ぐのです。
そして、一個、一個の食材を認識して味わって食べていますから、食事に満足感を得やすいのです。
「食べること」を大切にする。自分を罰したり、痛みつけたり、甘やかすために食べるのではなく、一つ一つの食べ物と向き合い味わいつくす場とする。それがマインドフル・イーティングです。食べることを疎かにすると、ストレス増加に繋がりやすいのです。
毎回、毎日の食事でマインドフル・イーティングは無理だという場合、一日一回だけはマインドフル・イーティングにしてみましょう。
あるいは、前述のように、一粒のいちごを目の前に置いて、定期的にマインドフル・イーティングの練習を積み重ねていきましょう。
※Jenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』を参考にしています。