仕事において「キャリア」は、「キャリアがある」「ハイキャリア」のような使われ方をします。キャリア=経歴、実績などと職場での能力の証のように捉えられることが多いです。しかし、人生100年ともいわれる時間においては、キャリアは職場での能力だけを指しません。職場や会社を離れたとしてもキャリアは築ける、いえ、これからは職場や会社を離れてもキャリアを築いていくことが、充実感や達成感を人生で感じるために一層大切になっていくでしょう。そこで、「キャリア」について、改めて考えてみましょう。
「キャリア」を単なる仕事での能力を指すのではなく、「生涯を通じて開発されていく「ライフロール」(人生における自分の役割)の実現」と捉えてみませんか。
アメリカのドナルド・E・スーパーという教育学者が「ライフキャリア・レインボー」という概念を打ち立てました。「キャリア」とは「自分と周囲や社会との相互関係の中で、自分らしい生き方を展望し、役割を実現していく過程」であると定義しています。
そして相互関係は、時々の自分の立場によって変わっていきます。スーパー氏は、子ども、学生、職業人、配偶者、家庭人、親、市民、余暇人、年金生活者の様々な「ライフロール」(人生における役割)に応じて、その時に必要な役割、能力が異なってくると考えました。「その時々の自分のライフロールを果たしていくこと」が「キャリア」であるとスーパー氏は定義しています。
人生全般における様々な「ライフロール」を経験して、人生の終わりを迎えた時に振り返ってみれば、虹のように多様なキャリアが築かれているという意味で、「ライフキャリア・レインボー」と呼んでいます。
この「ライフキャリア・レインボー」の考え方は、職業に対する考え方に新しい視点を与え、キャリアの再定義をしました。そして、私達の人生を幸福感で増やすためにも大きな影響力があります。
- 会社務めをしないから、家庭人であるから、キャリアを築けないということはないのです。キャリア=会社務めではありません。人それぞれの役割に応じて、キャリアを築くことが可能です。
- 人生を通じて、ライフロールは変遷していきます。そして複数のライフロールが同時に重複し、発展していきます。一つの場(今務めている会社)で能力が発揮できなかったからといって、キャリアが終わるわけでは全然ないのです。
- 会社を退職したらキャリアは終わりではなく、人生を通してキャリアを発展させていくことができます。定年退職した後の人生においても、キャリアの探求は続けられるのです。
- 「ライフキャリア・レインボー」を築いていくプロセスこそ、天命、天職を見つけていくことを可能にするかもしれませんし、自分の人生の意義(PERMAのM)を見つけることに繋がる可能性が高いのです。
- 「ライフキャリア・レインボー」に自分の価値観を反映させることで、自分軸で人生を生きていくことが可能になります。
- あるいは逆に「ライフキャリア・レインボー」を描いているうちに、各キャリアに共通している基盤、様々なライフロールにおいて常に発揮できる自分の強みを見出すかもしれません。それが、自分の核となる価値観や自分軸(スーパー氏はこれを「キャリア・アンカー」と呼びます)となります。自分のキャリア・アンカーを見出すことができた人は、どんなライフロールにおいても活躍できる可能性が高いのです。
自分がこの世の時間の終わりを迎えた時に、「ああ、きれいな自分なりのライフキャリア・レインボーを描くことができたなあ」と満足して目を閉じることができるといいですよね。
「キャリア」とは一生をかけて構築していくものであり、人生を通じて変遷していくものと理解した上で、自分が満足できる「ライフキャリア・レインボー」を作るためには、職業をどう活用していったらよいのでしょうか。次回で説明していきましょう。
自分のライフキャリア・レインボーを描くことは、「生きがい」や「人生の意義」に繋がりやすいのです。