自分の強みや自分の目標を考えて、仕事や日々の生活に結び付けて、人生における満足感や幸福感を増大させていく。これがポジティブ・インターベンションPositive Interventionであり、ポジティブ心理学が提唱している方法です。
一方で、私達が抱えている問題や困難を無視していいというわけではありません。何でもポジティブに捉える、世の中は全部ポジティブなのだと現実から乖離した考えを押しつけるわけでもありません。
アメリカ・ペンシルバニア大学のJames Pawelski教授はポジティブ心理学を赤いケープと緑のケープで説明しています。そのポイントを紹介しましょう。
ただ、日本人にはケープより、マントの方がイメージしやすいと思いますので、赤いマントと緑のマントで説明しますね。スーパーマンが背中に着けているマントをイメージして下さい。
ディズニー映画の「アラジン」で、魔法のランプをこするとジーニーという願いをかなえてくれる妖精が出てきますね。ある日、あなたはその魔法のランプを手に入れました。さっそくランプをこすったら、ジーニーが現れ、あなたに聞きます。
「赤いマントと緑のマントがあります。どちらも世界を変えられるパワーがあります。赤いマントを身に着けると、貧困や不公平や飢餓など私達が望んでない世界中の問題と闘うパワーが与えられます。緑のマントを身に着けると、調和や正義や平等など私達が望んでいる事を叶えるためのパワーが与えられます。あなたはどちらかのマントを選べます。あなたは赤いマントと、緑のマントと、どちらを選びますか?」
あなたはどちらを選びますか?
私はジーニーの問いかけに対して「赤のマント」と答えました。今起きている問題を解決できる方がいいと思ったからです。
赤いマントを選ぶか、緑のマントを選ぶか、どちらが正解で、どちらが間違っているというわけではありません。
ただ、ポジティブ心理学の場合、赤いマントだけでは成立しないことは明らかです。緑のマントがなければ、ポジティブ心理学の追求はできないのです。
つまり、問題を解決することだけにフォーカスしていると、ポジティブ心理学が切り開いた、人生におけるよい面を更に発展させていくという目標が達成されないのです。
赤いマント、つまり問題を解決することは大切ですが、赤いマントだけでは、ポジティブ心理学は成立しません。
この考え方を、従来の心理学とポジティブ心理学と比較して表すと以下のようになります。
現実的には、私達は赤いマントと緑のマントの両方が必要です。できれば、赤と緑のリバーシブルのマントがあればベストで、シチュエーションによって赤いマントを使ったり、緑のマントを使ったりできれば最高です。
ポジティブ心理学は赤と緑のリバーシブルのマントを身に着けようとする手段なのです。
ただ、私達はポジティブ心理学を知ろうと知るまいと、赤のマントの方、つまり問題にフォーカスする傾向があります。緑のマントが全然足りないのです。それで、ポジティブ心理学は、緑のマントの使い方をまず覚えましょうと主張しています。緑のマントを、多くの調査によって検証してある方法で、使ってみましょうと提唱しています。
もちろん赤いマントも時々使います。でも、私達は緑のマントを使い慣れていないので、まずは緑のマントの使い方を覚えましょうというわけです。緑のマントの使い方、それがポジティブ・インターベンション、ポジティブな気持ちに自分を動かしていくための働きかけです。
次回からは、このポジティブ・インターベンションの具体的な方法を紹介していきます。