ポジティブ心理学については本や大学の講義だけでなく、映画でも学ぶことが出来ます。ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン教授は『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』(2014年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、彼が教えているペンシルバニア大学で時折映画の上映会を行い、幾つかの映画を学生達と鑑賞すると書いています。
セリグマン教授が取り上げた映画は、
- 恋はデジャブ
- プラダを着た悪魔
- ショーシャンクの空に
- 炎のランナー
- フィールド・オブ・ドリームス
です。
私個人としては特に「恋はデジャブ」がお勧めです。
「恋はデジャブ」という邦題を見ると、ロマンティック・コメディと思いますが。いえ、実際その要素はあるのですが。もっと深淵なテーマがこの映画には含まれています。1993年公開作品ですが、公開当時はよくあるラブコメ映画と思われていたのが、じわじわとその意味深い内容が話題を呼び、ヒット作品となり、中にはニーチェとも関連づけて哲学的な映画として語る評論家もいます。
原題はGroundhog Day グラウンドホッグ・デー。日本でいえばウッドチャックの日ですね。アメリカには2月2日の聖燭節にグラウンドホッグ・デーがあり、グラウンドホッグが自分の影を見て冬眠するかどうかを観察することで春の到来の時期を占う伝統的な行事です。
この行事を取材するため、田舎町であるペンシルベニア州パンクスタウニーに滞在していた人気気象予報士フィル・コナーズ(ビル・マーレイ)と仕事仲間のリタ・ハンソン(アンディ・マクダウェル)。フィルはこの田舎の行事が退屈で文句ばかりいっています。リタは楽しんで取材しています。ところが翌日になっても、2月2日なのです。何回寝ても2月2日。フィルは時間の牢獄に閉じ込められて、2月2日という同じ日をずっと繰り返すことになるのです。おまけに同じ日が繰り返されている事に気づいているのはフィルのみ。さあ、フィルはどうしたか?
もちろん初めは暴れまくり、抵抗し、怒り、ハチャメチャになります。どうせ同じ日を過ごさないといけないなら、やりたい放題やってやると、自暴自棄になります。しかし、次第に彼は変わっていきます。変わったきっかけは、リタへの思いや、ホームレスの老人への哀れみや、いろいろあるのですが。彼は、同じ一日を永遠に繰り返さないといけないと覚悟する中で、自分の行動を変えていきます。そしてそれは周囲にも影響していきます。
全く同じ一日でも。どうやって過ごすか、どういう気持ちで過ごすかで、変わってくる。そして、どうしても変えられない事もある・・・。そして・・・という、フィルの変容の映画なのです。
人間のポジティブな感情の増幅や、個人のポジティブな変容が、どのような変化をもたらすかを描いている映画で、脚本が素晴らしいです。
見た後に、晴れやかな気持ちになれる名作です。
ぜひ、「恋はデジャブ」を楽しんでみて下さい。