ポジティブ心理学を活用してポジティブな感情を増やそうといっても、ネガティブな感情を無視するわけではありません。バーバラ・フレドリクソン教授が主張するように、ネガティブな感情があっても全然構わない、むしろあるのが普通。ポジティブな感情とネガティブな感情を3:1にすればよい、ということなのです。
そうはいっても、ネガティブな感情があまり大きくならない方がいいですよね。ポジティブ・インターベンションでポジティブな感情を増やす方法を紹介してきましたが、今度はネガティブな感情を減らしていく方法を紹介していきましょう。
嫉妬、怒り、悲しみ、喪失感、失望、無気力、落胆、恐怖、不安・・・。
様々なネガティブな感情があります。
そのような感情を感じるのは、人間として当然です。原始の時代から生き残るために、人間の脳は外界のリスクから身を守るためのアラート機能を発展させてきました。そのアラート機能が残っていますから、負のシチュエーションに対しては、人間は敏感になりがちです。
ですから、まず、ネガティブな感情を感じることは人間として当たり前のことだと理解しましょう。ネガティブな感情を押し殺したり、感じないようにするべきということはないのです。この点が、楽観主義やポジティブ・シンキングと、ポジティブ心理学が異なる点です。
では、ネガティブな感情を感じた時、どう対処したらよいでしょうか?
まず、ネガティブな感情を感じる自分に名前をつけてみましょう。
ネガティブな感情を感じる自分と、それに反論する自分と、2種類の人間が自分の中に存在するとイメージして下さい。ネガティブな感情を感じる自分は、たいてい、悲観的で因果応報的、運命論者で、努力を否定し、なげやりな人格だと思います。そんな自分に面白い名前をつけてみましょう。
- シリ―くん(英語のsilly愚かから)
- ブルーさん
- フキゲンさん
- でもでもさん
- ミスターネガティブ
など、好きな名前をつけてみて下さい。
ネガティブな感情に全く関係ない名前でもよいのです。リンダとか、又造とか、ジャックとか。
何でもよいので、ネガティブな感情を生み出す自分に名前をつけます。
そして、ネガティブな感情が沸いてきたら、その名前を使って呼びかけます。
「シリ―くん、またまた嫌な気持ちにさせてくれたわね」
「ブルーさん、また落ち込んでいるわけね」
「又造、すごく怒っているわね」
など、ネガティブな感情を創り出す自分に話しかけてみましょう。
声に出して話しかけた方が効果的ですが、周りに人がいると、ぶつぶつ独り言っている・・・って思われるかもしれないので、周りに人がいない時にして下さいね。
ネガティブな感情を生み出す自分を、そうでない自分と切り離して、別人格にするのです。特定の名前で話しかけることで、ネガティブな感情を客観化させていきます。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、このネーミング行為には次のような効果があるのです。
- ネガティブな感情イコール自分ということにならなくて済みます。
- ネガティブな感情に対し、客観的に捉えやすくなります。
- ネガティブな感情に対し、反論しやすくなります。
- ネガティブな感情に対し、対極的にポジティブな感情を打ち立てやすくなります。
- ネガティブな感情を引き起こした相手にすぐに反応せずに、冷静になりやすくなります。
- とめどなく、ネガティブな感情のループに落ち込んでいくのを防ぎやすくなります。
- 繰り返しているうちに、ネガティブな感情の対処方法が上達してきます。
ネガティブな感情が沸いてきたら、「ネガティブくん、ずいぶん怒っているわね」などとつぶやき、いったん感情の渦をストップさせましょう。
自分のネガティブ感情に特定の名前をつけて客観化させます。そして話しかけ方にもコツがあります。次回はそのコツを紹介しましょう。