ポジティブな感情の増やし方、ネガティブの感情の減らし方について、様々な方法を紹介してきました。ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、感情をどう取り扱い、対処していくかは、私達が幸福感を感じるために大変重要です。日本人は感情を押し殺して表に出さないことを美徳とする伝統がありましたが、外に発散した方がよい感情もあります。感情の取り扱い方は、生きていく上で重要なスキルなのです。
アメリカのイェール大学の教授Peter Salovey とニューハンプシャー大学の教授John Mayerが、Emotional Intelligence (EI)という概念を発表しています。感情をうまく取り扱うためには、特にコミュニティーにおいては、EIが重要であると述べていますので、EIのアイディアを紹介しましょう。
Emotional Intelligence、直訳すれば感情的知性になります。略してEIとも呼ばれます。IQやEQのように知性や感情の指数もありますが、指数なので特定のテストで定量的に計測するもので、すべての知性や感情を捉えているとはいえません。
2人によればEIは4つの能力から成り立っているとしています。
- Ability to Perceive Emotion :感情を認識する能力
自分や他人がどのような感情を抱いているかを認識する能力です。言葉以外にも身体の動きやジェスチャー、顔の表情からも感情を把握する能力です。 - Ability to use emotions to facilitate thought:思考を形成するために感情を使う能力 感情を判定したり、方向づけして、仕事や生活に役立てていく能力です。問題解決能力とも結びつきます。
- Ability to understand emotions:感情を理解する能力 感情の原因と、その影響、結果を理解する能力です。なぜその感情が生まれたのか、複雑な感情ほど能力が必要になります。複数の感情同士の影響や、矛盾した感情の存在を理解する能力も含みます。
- Ability to manage emotions 感情を管理する能力
感情を無理やり押さえつけたり、無い感情をあるように装うような、感情を「コントロール」する能力とは違います。感情を自分の中でどう消化していくか、感情を適切な場所で適切な方法で発する能力です。自分の感情だけでなく、他人の感情、コミュニティの感情を管理する能力も含みます。
こう挙げてみると、感情を取り扱うには、複数の能力が必要だとわかります。特に職場や学校や地域社会などのコミュニティにおいては、自分の感情もさることながら、他人の感情も認識、利用、理解、管理する能力が高い方が、自分の望む方向に人生の舵取りをしやすくなるでしょう。加えて、他人との感情のぶつかり合いや消耗戦を避けることができやすくなります。
だからこそIQやEQよりもEIの方が、社会生活を営む生き物である人間にとっては大事なのではないかという考えもあります。
EIがPeter SaloveyとJohn Mayerによって提唱されたのは1990年。まだ比較的新しい概念です。ただ、EIの能力が、私達の人生に役立つだろうなあということは想像できます。
ではEIの能力は高めることができるのでしょうか?それとも生まれ持った才能や遺伝で決まってしまうのでしょうか?これは前者であろうと言われています。では、どうしたら高められるのでしょうか?これまでこのブログで紹介してきた「ポジティブ・インターベンション」「ネガティブな感情の対処法」は、感情を認識し、理解し、役立て、管理しますので、EI能力を鍛えるのに大変適しています。
EI能力をアップさせるためにも、「ポジティブ・インターベンション」や「ネガティブな感情の対処法」をトライしてみましょう。
ポジティブ心理学の見地からはEIの能力は高められると考えますが、EIは研究や調査が進行中の分野で、まだ客観的データを分析した結果に基づいた論証が十分でない部分があります。これからEIの新しい見解や説が発表されてくるかもしれませんので、注目です。