ポジティブ心理学の見地からすると、ポジティブな感情を増やし、ネガティブな感情もあるけれど減らすよう努めて、心身共に心地よい幸福な状態でいることをウェル・ビーイングwell-beingといいます。このウェル・ビーイングな状態を目指して、このブログでは様々な理論やワークを紹介しています。
でも一つ気をつけたいことがあります。「楽しければそれでいい」「ポジティブな気持ちになりさえすれば、ウェル・ビーイングな状態になれる、幸福になれる」というわけではない、という点です。
ポジティブ心理学ではウェル・ビーイング、幸福な状態には2種類あると考えます。ヘドニアHedoniaとユーダイモニアEudaimoniaです。どちらもギリシャ語から由来する言葉で、元々は古代ギリシャの哲学者アリストテレスが提唱した概念です。
へドニア
快楽、喜びと結びつく幸せで、五感を通じて感じる幸せです。おいしい物を食べる、たっぷり眠るなどが該当します。比較的短時間で得ることができる幸福感です。
ユーダイモニア
へドニアよりももうちょっと複雑で、自分の心や感情を通じて感じる幸せです。そして、喜びもありますが、ユーダイモニアを得る過程では苦しみやストレスもあります。こちらはある程度時間をかけないと得られない幸福感であることが多いのです。
私達が幸せだなあと感じるためには、へドニアもユーダイモニアも必要ですが、ユーダイモニア的な幸福感なしに、へドニア的幸福感だけを求めていると、刹那的でより強い刺激を求めやすくなる、あるいは持続的な幸福感を感じなくなるので、注意が必要なのです。
へドニア的幸福感は、ケーキを食べる、面白いテレビを見る、テニスをする、8時間眠る等で、すぐに実現できそうですが。ユーダイモニア的幸福感は、一足飛びに得られるとは限りません。どうやって、ユーダイモニア的幸福感を得たらよいのでしょうか?
これについては、心理学者キャロル・リフCarol Ryffがユーダイモニア的幸福感を得るための6つの手段を提唱しています。
- 自律性(autonomy):自分の意見、考えを持って、自ら行動する。
- 環境を制御する力(environmental mastery):日々の生活で自分の予定やシュエ―ションを管理できる。
- 人間的成長(personal growth):チャレンジをして人間として成長する。
- 積極的な他者との関わり(positive relations with others):他者と積極的に交流する。
- 人生の目的(purpose in life):人生に目的を持つ。
- 自己受容(self-acceptance):自分を認める、受け入れる。
この6つの項目を満たすと、ユーダイモニア的幸福感を感じ、へドニア的幸福感よりも、長続きしてインパクトの大きな幸福感を感じながら生きることができるとリフは述べています。
自分の今月、今年の目標を決める時、あるいは将来の夢を描く時に、へドニア的幸福感を感じる手段だけではなく、ユーダイモニア的幸福感を感じられる目標を含むと、長続きして意味のある幸福感を味わうことができます。
これまで紹介してきた「ポジティブ・インターベンション」「年末年始のワーク」には、へドニア的なものと、ユーダイモニア的なものの両方が含まれていますので、ぜひワークを試してみて下さい。「新年のワーク」はユーダイモニア的なものです。
自分で自分を幸せにしてあげるスキルやノウハウが高まると、他人や環境任せではなく、自分一人で自分を幸せな状態にすることができるようになります。独立した自分を持ちやすくなります。それにより、自律性を持つなど、ユーダイモニア的幸福感を感じる能力が更に高まっていきます。