現在、私達の世界を脅かしている二つの出来事。2020年からのコロナウィルス感染拡大、そして2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻。今までも似たような、もう少し規模が小さい出来事はありましたが、ここまで世界すべてに関係する未曾有の事態は、第二次世界大戦以来初めてではないでしょうか。そして、Twitter、Facebook、インスタグラム、Ticktock、YouTubeなど様々なSNSが発展した中での出来事であることが、過去のパンデミックや紛争とは異なっています。
瞬時に世界の出来事が、よいニュースも悪いニュースも、そして事実もフェイクも、すべてが多くの人にシェアされ、拡散されていきます。
人間の脳は原始時代に生き抜いてきた名残でアラート機能が強く働きますから、ネガティブなニュースやリスクに敏感に反応します。これは生存本能の一種ですから、必ずしも悪いことではありません。しかし、ネガティブな情報にばかり接していると、そこから離れられなくなり、常にネガティブな情報だけを自ら追い求め、自分をネガティブ・ワールドに閉じ込め、ポジティブな情報を自分からシャットダウンしてしまうことがあります。
SNSが発展した現代だからこそ起こる心理状態、まさにSNS病といえます。
コロナウィルス感染拡大におびえていた2020年から急速に拡大したSNS病。代表的な症状が3つあります。
FOMO(フォーモ)
Fear Of Missing Out。楽しいことやチャンスに自分だけ取り残されるという不安のこと。ビジネスでFOMOはよく使われますが、SNSにおいては自分だけ最新の情報をゲットしていないのではないか、情報を見逃していないかと焦燥感に駆られて、SNSをずっと見続けてしまう状態をいいます。
MOMO(モーモ)
Mystery Of Missing Out。他人がSNSに投稿しないことに対して抱く不安。なぜ自分に情報がはいってこないのか?という取り残される謎に悩まされる状態。みんなが知っている情報から自分だけ疎外されているのではないかという恐怖、あるいは他人がSNSを更新しないことで、その人がどういう状態にあるのか気になって仕方がないという状態です。フォローしている人のTwitterやインスタグラムを常に追ってしまう行動をさします。
Doomscrolling(ドゥームスクローリング)
「ドゥーム(Doom)」は最悪、「スクローリング(Scrolling)」はSNSのスクロールのこと。インターネットやSNSでネガティブな暗い情報を集め続けてしまうこと。長い時間、スマートフォンを持って、次々とアップされる新しい情報をスクロールし続ける状態です。
3つの状態すべて、SNS、インターネットが発展した現代だからこそ顕著になってきた症状です。SNSやインターネットで世界中の最新の情報が手に入ることは、悪い事とは限りません。自分の知識や教養をアップデートできますし、様々な出来事に興味を持つこともできます。SNSを通じてコミュニティを広げることもできますし、自分の意見を世界に発信することもできます。また、必要な支援を届けることもできます。
しかし、もし、あなたが上記の3つのSNS病の症状に陥っているのなら、少しSNSやインターネットとのアクセスを制限した方がよいでしょう。
具体的には次のような方法が考えられます。
通知をオフにする
Yahooなどインターネットプロバイダーやアプリからの通知をオフにしましょう。スマートフォンの「設定」で「通知」を選び、自動的にプッシュ通知が送られる設定を「オフ」にしましょう。防災アプリのように命に係わるものについては通知はオフにしなくてもよいと思いますが、他はリアルタイムで通知を受け取らなくてもよい知らせの方がほとんどです。
信頼できる情報ソースに限定する
世界で重要な出来事が起こっている事を知ることは、大切です。しかし、その情報源には注意しましょう。信頼できる情報ソースだけ、取り込みましょう。ワイドショー的にニュースをエンターテインメントの一種として見ることをやめてみましょう。よく知らない個人のブログや、恐怖ばかり煽るようなサイトを追うことはやめましょう。ニュースの悪食は、脳や心を乱していきます。
公的あるいは国営のニュースならば100%信頼できるとは限りませんが、情報ソースは信頼できる客観的なテレビやサイトを厳選して、1つか2つに限りましょう。
ニュースを見る時間を決める
ニュースを見る、追うのは、19時から30分のみ、というように、時間を指定し、費やす時間も制限しましょう。
特に夜、寝る前に、ネガティブなニュースを見ると、睡眠に支障をきたします。寝る前にインプットしたネガティブな情報が脳に蓄積されてしまいます。寝る2時間前には、ニュースから遠ざかりましょう。
自分ができることは何かを考える
世界の情勢や苦しんでいる人々の状況に関心を持ち、知ろうとする気持ちは、人間としてとても大切です。ただ、情報を消化するためだけに情報を得ていることにならないようにしましょう。「悲しい」「苦しい」「つらい」の先に、一歩進んでみましょう。「自分にできることはあるだろうか?」と考えてみましょう。コロナ対策であればまず自分がコロナにかからないようにして健康でいる事が医療従事者の方々の負担を減らすことになります。ウクライナ支援であれば、寄付をする、国際援助団体を通じて援助物質を送るなど、日本の私達にもできる事があると思います。「自分にできる事はあるか?あるのなら何か?」を考えてみましょう。
まずは自分がきちんとした生活を送る
睡眠、食事、運動。生活の基本が大切です。不安な状態にある時こそ、大切です。SNS病に陥っていると思ったら、まず、睡眠を十分とること、バランスの食事をとること、一日に30分~1時間の運動をすること(歩くことでOKです)。この3つの基本を立て直しましょう。
不安が増幅されやすい状況下では、SNSとの付き合い方を見直しましょう。