ネガティブ感情から抜け出すためには、「フロー」と呼ばれる状態に入ることが効果的と言われています。「PERMAの実践➁ 熱中することを見つける」でも説明しましたが、フローとは熱中、フォーカス(集中)、モーメンタムを感じる時間です。心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏によって、フローの概念が広く知られるようになりました。
フローは、その行為をしている最中はまるで時間の感覚を失ったように、集中して夢中になっています。マインドフルネスな時間ともいえ、ネガティブ感情を減らし、ポジティブ感情を増やす効果的な方法です。ヨガ、瞑想、掃除、料理、運動、趣味活動などが、フローに入りやすいといわれています。
しかし、一見フローに見えて、実はネガティブ感情を増やしてしまう「ジャンク・フロー」、つまり偽のフローがあることに注意して下さい。
時間も忘れて夢中になっている。だからフローに入っていると思いきや、終わった後は、罪悪感や虚無感、無力感、自己嫌悪感に襲われ、かえってネガティブ感情を増幅させてしまう。そんなジャンク・フローに注意しましょう。
ウェル・ビーイングを実践して教えているローリー・サントス博士は、コロナウィルス感染拡大下でジャンク・フロー状態に陥ったと述べています。彼女のジャンク・フローは、「ジャージーショア」というリアリティドラマで、夜中までこのドラマを見てやめられなくなったそうです。ウェルビーイングの専門家でも、ジャンク・フローに陥ってしまうわけですから、私達はもっと気をつけて、ジャンク・フローと本当のフローを見分けなくてはいけませんね。
ジャンク・フローは、その時は夢中で楽しんでいるかもしれませんが、終わった後、何ともいえない虚無感、罪悪感、自己嫌悪感、自己否定感が出てきます。本当のフローは終わった後、前向きになったり、自己肯定感を感じたり、物事に積極的になります。その時間が終わった後の自分の感情で、ジャンク・フローかそうでないかは、区別がつくと思います。
ジャンク・フローの典型的な行動は次にようなものです。
- ネットフリックス等のオンデマンドネット配信のドラマをずっと見続けてしまう
- お菓子やポテトチップスを大量に食べる
- お酒を大量に飲む
- TwitterなどのSNSで情報を長時間にわたって追い続けている
- 友人や家族と誰かの批判や悪口をずっと話している
こうしてみるとジャンク・フローのポイントは「大量」「長時間」にポイントがありそうです。どんな事でも量や時間が過ぎれば、害になります。もし自分の時間を1時間以上費やしている行動があれば、それがジャンク・フローでないか、チェックしてみましょう。
ネットフリックスのドラマを見ることは楽しいですし、それ自体がジャンクなのではありません。ただ睡眠時間や仕事の時間を削ってまで見続けていればジャンクに変わります。毎日1話づつ楽しみにわくわくしながら見るなら、よい気分転換になり、良質のストーリーであればそれはフローになる可能性もあります。
ケーキも1個、お茶とじっくり味わうなら、幸せを感じてフローな状態になるかもしれません。しかし、2個も3個も食べたり、ポテトチップス一袋を開けてしまった・・・という状態になったら、罪悪感があなたを襲うでしょうし、健康にもよくありませんから、ジャンク・フローになってしまいます。
自分の一日の中にジャンク・フローな行動はないか、チェックしてみましょう。
もしジャンク・フローがあれば、急に完全排除は難しいかもしれないので、ジャンク・フローにかける時間や量を減らしていきましょう。
- ドラマなら一日一話。
- ケーキなら一回に一個。
- SNSで情報を追うのが楽しいとしても、一日30分以内にする。
- お酒を飲むことが楽しいとしても、一日缶ビール2缶までとする。
多少の制限を設けて、その枠内の中で楽しむようにしましょう。そうすれば、その枠を自分が守っているということで、後から自己嫌悪や虚無感を感じることを避けられます。
そして、ジャンク・フローが減って空いた時間は、本当のフロー活動に置き換えていきましょう。