オプティミズムがレジリエンスの重要な要素であると説明してきました。「レジリエンスには7つの要素がある」で説明したように、オプティムズム以外にもレジリエンスを作っていく重要な要素がありますが、その中でもセルフ・アウェイアネス(自己認識能力)も大変重要になります。自己認識能力とは、自分の思考や感情、行動を追跡して、把握することができる能力です。自分の思考を客観的に理解することができる能力ともいえます。
なぜ自己認識能力がレジリエンスにおいて特に重要かというと、私達は困難な状況に対するとすぐに思考のトラップ(罠)に陥ってしまうからです。思考のトラップに陥ってしまうと、建設的な行動や考え方ができなくなり、ひたすら同じ問題や悩みを反芻したり、自暴自棄な言動に走ったりします。レジリエンスとは真逆な行動です。
思考のトラップには5種類あります。
Mind-reading マインド・リーディング
人の気持ちを勝手に想像しわかっていると思い込む。または、人が自分の気持ちを全部わかっていると思い込む。
Aさんは私が忙しいってわかっているのに私に用事を頼む。なんで意地悪なのだ。Aさんは私をいじめている。→Aさんは「私」の忙しさはわかっていないだけかもしれません。
Me trap ミー・トラップ
全部自分が悪いと思い込む。罪悪感を感じ、問題を全部自分のせいだと責める。
子供の成績が悪いのは私が勉強が得意でないからだ。
→子供の成績と、「私」の学業は関係ありません。親子であっても、子供の成績をコントロールすることはできません。
Them trap ゼム・トラップ
ミー・トラップの反対の思考。全部他の人が悪いと思い込む。自分以外の誰かのせいで問題が生まれたと責める。
Bさんがプレゼンテーションの資料を魅力的に作らなかったから、プロジェクトが経営会議で却下された。Bさんのせいだ。
→プロジェクトが却下されたのは、資料の出来によるものかどうかはっきりしていません。まずは、却下された理由を上司に確認するのが先です。
Catastrophizing カタストロファイジング 深刻化する
悩みや問題をずっと考え続けて反芻する。非現実的な最悪の事態を想像してパニックになる。自分の想像が、現実を超えて、心配を増幅させる。針小棒大の考え方。
仕事のミスで上司に叱責された。私はもうこの会社ではだめだ。クビになって、失業する。
→たった一度のミスで、社員をクビにする会社は滅多にありません。
Helplessness ヘルプレス 無力感
一つの問題がすべての事に悪影響すると考え、自分には何もできないと考えて何もしない。絶望して諦める。
体重が増えて体が重いけれど、両親も太っているし、肥満は遺伝だから私はどうせ一生太ったままだ。
→肥満に遺伝の影響は多少あるかもしれませんが、体重のコントロールは本人の食生活と運動の管理で可能です。
特に「カタストロファジング 深刻化する」は、私達が陥りやすい思考のトラップです。
自分が悩みや問題を抱えた時、上にあげた思考のトラップに陥っていないか、確認してみましょう。上記の5つの思考のトラップに該当するような考え方をしていたら、「ああ、自分は今思考のトラップに陥っている。落ち着け。まずトラップから出よう」と自分に言い聞かせましょう。まずは、自分がどの種類の思考のトラップに陥っているか、気づきましょう。これこそ、セルフ・アウェアネス、自己認識能力です。