「ポリアンナ症候群」とは、現実とは乖離してやたらと楽観的でいる特性のことです。現実を直視しないで、物事をいい方向にしか考えない、行き過ぎたポジティブ思考といえます。一種の現実逃避ともいえます。「ポリアンナ症候群」は児童文学の「少女パレアナ」の主人公ポリアンナに由来して命名されました。
ポジティブ心理学の研究というと、いつもポジティブ思考で、世界のすべてを(自分自身を含めて)前向きにしか捉えないと誤解されがちですが、それではポリアンナ症候群になってしまいます。
人間のネガティブな感情にも、きちんと役割があります。問題や危険、心理的な危機を知らせるアラート機能なのです。ですから、ネガティブな感情を持たないポリアンナでは、小説の世界ならいざ知らず、現実の世界では生きていく事がとても難しくなってしまいます。
「いつでもポジティブでいるべき」
「いつも前向きでいなくては」
「いいことしか起こらない」
「すべてをポジティブに考えないと」
このような考え方は、ポリアンナ症候群一歩手前ですので、注意です。
ポジティブ心理学において、楽観主義、オプティミズムは重要な要素ですが、何でもかんでもうまくいくという根拠のない楽天主義は否定しています。
ポジティブ心理学では、むしろ人間は常にポジティブな心情ではいられない、人生にはネガティブな心情になる場面が必ずある、ということを大前提にしています。
「人生も、あなた自身も、ずっと順風満帆ではいられない」というリアルな前提から始まっています。だからこそ、問題や困難にぶつかっても乗り越えて成長し、幸福感や満足感を感じながら生きていくためには
- 適切な量のオプティミズムを持つことで人生を自分で望む方向に変えていけると信じ
- 困難を乗り越えるためのレジリエンスを培い
- 望む方法へ変えていくためのポジティブ・インターベンションの方法を学ぶ
のです。それらの具体的な方法を紹介しているのが、ポジティブ心理学です。
「何でもかんでもポジティブ」という行き過ぎたポジティブ思考と、ポジティブ心理学は異なるという点をご理解下さい。でも、「人生いつもバラ色ではない」「人間は必ず困難に直面する」という前提にたって研究されている方法だからこそ、私達が現実世界で生きていく上で役立つスキルだと思います。