人との結びつきを感じる、笑顔を作る、思いやりの瞑想をする・・・。そんなことで本当にポジティブな感情が増えるのだろうか?自分の人生がよくなるのだろうか?
そう疑問に思う方もいるかもしれません。(実はポジティブ心理学を学ぶ前の私がその一人でした。)
そういう疑問に対して、ポジティブ心理学の研究者達は効果を科学的に証明しようとしてきました。実はポジティブな感情の増減は、免疫システムに影響を与えるようなのです。
感情によって免疫システムに影響があることを、スティーブ・コール(Steve Cole)博士というUCLAで生物行動科学を研究する教授が発表しています。
遺伝子発現(gene expression)という言葉を聞いたことありますか?遺伝子の情報をもとにタンパク質を作る過程が、遺伝子発現です。タンパク質のアミノ酸の正しい配列情報はDNAの遺伝子の部分に塩基配列として存在します(これが遺伝暗号)。この正しい配列情報に基づきちゃんとタンパク質を作る事が遺伝子発現で、生物にとっては生きていく上でとても大切な事です。遺伝子の働きにスイッチを入れるとイメージすると、よりわかりやすいかもしれません。
スティーブ・コール博士の研究により、遺伝子発現と人間の感情は関係があることが科学的に示されました。
慢性的にストレスや心配、不安などを抱えていると、そのネガティブな感情が遺伝子発現に影響するのです。具体的には、ネガティブな感情ばかりずっと感じていると、
- 炎症を引き起こす遺伝子発現を増やす
- 抗ウィルスの働きをする遺伝子発現を減らす
- 抗体を合成する遺伝子発現を減らす
ことがコール博士の研究によって明らかになりました。
感情は、私達の遺伝子レベルにまで影響を与えるのです。
ですから、ネガティブな感情を減らし、ポジティブな感情を増やしていく行動を取ることは、私達が生物として健康に生きていく上でもとても重要なのです。心の問題だけでなく、生命維持のためにも大切なのです。
「病は気から」という諺がありますが、あながち嘘ではないのです。
ただ、正しい機能の遺伝子発現をしよう!と意識しても、できるわけではないのですよね。良質な睡眠を取る、定期的に運動をする、ヘルシーな食生活をするなどの健康面での管理と共に、ポジティブになる感情を増やす、ネガティブな感情をなるべく減らしていくという感情の管理が重要なのです。
その一つの手段として、「思いやりの瞑想」は効果があるという研究結果がありますので、ぜひ試してみて下さい。
※ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授によるポジティブ心理学の講義の内容を参考にしています。
感情が遺伝子発現に影響を与えるといっても、感情だけが遺伝子発現に影響する要素ではないです。また病気を患っている人が、ネガティブな感情の多く持っていたから発病したとは限らないので、ご注意下さい。